こんにちは。画家のマキノロランです。
今回は、「水彩絵の具の選び方」をテーマに、主に「透明水彩画」を始めたいという初心者の方々向けにお話をします。
いざ「始めるぞ!」となった時、「理想とする絵を描くにはどんな絵の具を選ぶと良いんだろうかな?」という悩みを持たれる初心者の方が多いようです。
その選び方も、色数や容量で悩んだり、メーカーの選択で悩んだりなど様々です。
私は値段に悩んでしまいます。
ここでは、主に「透明水彩」をこれから始めたい初心者の方に向けて、基本的な透明水彩絵の具の選ぶポイントについて優しく比較・解説します。
どれを選べばいいのか迷っている人に役立つ、実用的なガイドですので最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
Contents
水彩画初心者【絵の具の選び方 その1】 パン VS ケーキ VS チューブ
どんなものでも新しいものを手にする時の喜びは最高ですよね。
小学生の頃に手にした新品の絵の具セット。ワクワクした思い出が残っている方も多いのでは。
自分に合った絵の具を選んで、愛着を持って描いていく。その出会いは、その後の絵画人生を大きく左右することになるかもしれません。
私はケチなので、小学校の絵の具を使ってずーっと描いていたものですから、透明水彩絵の具を初めて使った時の感動は、ドキンちゃんとの出会いみたいでした。
さて、これから始める皆さんは、どんな出会いを選択するか!早速検討会を始めましょう。
「パンカラー」「ケーキカラー」「チューブ絵の具」の違いとは?
「パンカラー」とは、半乾きの状態で固形にした絵の具のことです。
「小さな四角い容器」に収めてあります。またの名を「キャラメルカラー」と言います。
ウィンザー&ニュートン ハーフパン12色¥10,576(amazon)
大きさは、3種類あります。
長男(大)は「ホールパン 5ml (約30mm×12mm)(約28mm×18mm)」など。
次男(中)は「ハーフパン 2ml (約15mm×12mm)(18mm15mm)」ほとんどがこのサイズ。
末っ子(小)は「クォーターパン 1ml (11mm×11mm)」など。
大きさはメーカーによって多少のばらつきがありますが、容量はほとんどが5ml、2ml、1mlです。
「ケーキカラー」とは、絵の具を乾燥させ、粉状にしてプレスし固形にした絵の具のことです。不透明もあります。
容器は丸と四角があります。大きさは、直径25mmです(ホルベインの不透明は30mm)。
ホルベイン 透明水彩ケーキカラー12色¥2,690(amazon)
「チューブ絵の具」とは、アルミニウム製のチューブに入った液状の絵の具です。
内部表面を合成樹脂でコーティングし、絵の具による腐食を防止しています。
ホルベイン 透明水彩ルミナスカラー 5ml12色¥3,960(amazon)
容量は、2号5ml、5号15mlなどが主流です。箱詰めされてセット販売が主流の絵の具です。
この時点で、皆さんはどちらの絵の具が好みですか?
まだどっちもいいなあと思われてるのではないですかね。私も目移りして決めるのが難しいです。
チューブ絵の具の片付けが面倒くさい!であるならば…
ここで補足ですが、チューブ絵の具の場合、絵を描くたびにパレットに絵の具を出して、描き終えたら洗って片付ける…となると、ちょっと面倒くさい感じがしますね。
それ以上に、残った絵の具がもったいない! というわけで、多くの人は、購入した絵の具をパレットに出して一度乾燥させて固めるという作業を行います。
では、どんなパレットだと使いやすいのかな? いくつか比較検討してみましょう。
パレットには、「金属製」「プラスチック製」「陶磁器製」のものがあります。
また、手で持てるタイプだと親指を通す穴が開いています。
金属タイプは、スチール素材とアルミ素材があります。
スチール素材は強度が高いので頑丈です。重量感があり安定しますが、持ち運びが不便なので外でのスケッチには向いていません。
アルミ素材は軽いので、持ち運びが楽です。頑丈さはやや劣ります。
価格はいずれも高めですね。
ホルベイン アルミ製パレット35仕切¥3,800(amazon)
これは、アルミ製(金属タイプ)です。
長さ352㎝×幅306㎝とやや大きめのノートパソコン並みですね。
金属製に比べて、プラスチック製は、軽量で使いやすく初心者向きです。
ただ、水分を弾きやすいので、混色の時など色合わせで見づらく感じることがあるかもしれません。
また、消耗してくると汚れが取れにくくなります。
その時は、プラ消しで擦ると落とせることがあります。またはメラミンスポンジなど。
価格はお手頃です。
これは、ポリスチレン製(プラスチックの一種)です。
長さ259mm×幅196mmなのでA4サイズの用紙並みです。
実際は画像のような絵の具の出し方ではなく、たっぷりと仕切りを満たすように絵の具を乗せます。
画像のようにチビっと出して固めると、乾燥後にコロッと猫のウンチのように剥がれ落ちます。
画像はありませんが、陶磁器製のパレットは、8cm~15cm程度で梅皿・菊皿と呼ばれるものがあります。
複数箇所に仕切られた形状で、重量があり安定して使えます。
たくさんの絵の具を一度に溶き、大画面を塗るときに使用すると便利です。
水彩画初心者【絵の具の選び方 その1】 のまとめ
私が考える初心者向けの絵の具は…、
1 小さめな絵を描く場合
【オススメ】「ケーキカラー」です。
【理由】・絵の具幅が大きめなので、筆で絵の具を擦って溶きやすく、描きやすいからです。
2 大きめな絵を描く場合
【オススメ】「チューブ絵の具」です。
【理由1】・パレットや皿などに十分な絵の具を絞り出して描けるからです。
【理由2】・パレットに絞って固形化させて描く場合でも、絵の具がなくなったらすぐチューブから継ぎ足しができるからです。
では、次は初心者向きの絵の具の価格などについて検証していきましょう。
水彩画初心者【絵の具の選び方 その2】気になる価格
気になるチューブ絵の具の価格
私はかつて、メーカーは気にせず「描ければ何でもいいや(小学生が使うマット水彩など安物でもOK)。」と思っていました。
しかし、透明水彩は、そんな安易な世界ではないんですね。
ぜひ出会ってください。雅やかな美の世界に。
ということで、次は私なりにメーカーの価格検証をしてみたいと思います。
プロ向き価格 VS アマ向き価格
プロの方々はどんな絵の具を使っていらっしゃるのか2名のプロ画家を調べてみました。
私の尊敬するあべとしゆきさんは、17色をセレクトし、日貿出版社から「数量限定・弊社通信販売限定」で箱入り(各5ml)を販売されていました。(¥23,177)
その内訳は、
ホルベイン透明水彩絵具(1本¥473)
W305 マンガニーズブルーノーバ ×2本
シュミンケ ホラダム水彩絵具 (1本¥1,980~¥2,255)
209 トランスペアレントイエロー(トランスルーセントイエロー)
218 トランスペアレントオレンジ(トランスルーセントオレンジ)
485 インディゴ
494 ウルトラマリンファイネスト
524 メイグリーン
655 イエローオーカー
920 ブリリアントオペラローズ
ウィンザー&ニュートン水彩絵具(1本¥836~¥693)
321 インダンスレンブルー
733 ウィンザーバイオレットディオキサイジン
502 パーマネントローズ
726 ウィンザーレッド
730 ウィンザーイエロー
676 バンダイクブラウン
460 ペリレーングリーン
722 ウィンザーレモン
503 パーマネントサップグリーン
さらに、あべさんのパレットには、シュミンケの「デルフトブルー」「ベリレーングリーン」とウィンザー&ニュートンの「オペラローズ」が使われているようです。
このセレクトに寄せられたご本人からのメッセージには、
*初心者向きではないこと。
*初心者はメーカーの12色セットや18色セットなどを並べても良いこと。
*透明度の違い、粒子の大きさの違い、定着しやすさの違いを理解すること。
*ご本人のパレットには、透明色で、粒子が小さく、定着しやすい絵の具を選んでいること。
などが書かれていました。
次は、お二人目の尊敬する透明水彩画家は永山裕子さんです。彼女がセレクトした12色(5ml)もやはりシュミンケホラダム透明水彩絵具です。
画材通販専門店画材ショップ楽屋HPをチェックすると、12色が掲載されていましたので紹介します。
215レモンイエロー/225カドミウムイエローミドル/349カドミウムレッドライト/353パーマネントカーマイン/492プルシャンブルー/494ウルトラマリンファイネスト/519フタログリーン/534パーマネントグリーンオリーブ/649イングリッシュベネチアンレッド/655イエローオーカー/663セピアブラウン/780アイボリーブラック 合計価格¥26,290
お二人が共通して使われている色は、ウルトラマリンファイネストとイエローオーカーの2色だけですが、永山さんの他のセレクト商品も含めて見るとトランスルーセントイエロー・オレンジも共通していますね。
上級者は微妙な違いにこだわるのがわかりますね。
これらの価格をみると、チューブ絵の具5mlでは、
💠王様レベル シュミンケホラダム水彩絵具 (1本¥1,980~¥2,255)
💠侯爵レベル ウィンザー&ニュートン水彩絵具(1本¥836~¥693)
💠子爵レベル ホルベイン透明水彩絵具 (1本¥220〜¥484)
という感じですね。
そして、シュミンケやウィンザー&ニュートンは上級者向け、ホルベインは初心者対応型(上級者も十分対応)ということが読み取れます。
いずれの会社も発色や透明度は遜色ないと思います。
💠子爵レベル ターナー
(1本¥209〜¥418)
●内訳/A色 ¥209(本体価格¥190)
〜B色 ¥242(本体価格¥220)
〜C色 ¥308(本体価格¥280)
〜F色 ¥418(本体価格¥380)
💠子爵レベル クサカベ
(1本¥242〜¥825/10ml)
●内訳/専門家用水彩絵具全90色2号
¥242(¥220)
¥275(¥250)
¥330(¥300)
〜単一顔料シングルピグメント
全18色10ml¥605(¥550)
〜ハルモニア
全24色10ml¥825(¥750)
※全て毒性なし。
結論としては、私は庶民派なので、初心者の方には、安価で発色も安定しているホルベインをお勧めしたいですね。
気になるパンカラーの価格
パンカラーは、高品質な原料で製造された製品なので高価格を覚悟すべしです。
彩度や明度が高く褪色、変色が少ない絵の具です。
高級水彩紙向けに開発されていて、サイジング(どうさ)が強い紙でも弾かず滑らかに彩色できるのが特徴です。
では、気になる価格は???
レンブラント ハーフパン12色 ¥10,338(amazon)
レンブラントは、オランダ王室から「ROYAL」の称号を授けられたロイヤルターレンス社が誇る、最高峰の水彩絵の具です。
最高級の顔料+無色のアラビアゴム=輝きのある透明感+優れた耐光性=長期保存可能の絵の具です。
ハーフパンは全120色。
ホルベイン アーチストパンカラー12色¥6,999(amazon)
ホルベインは、高級感を重視しているので、高品質なパンカラーです。
ウィンザー&ニュートン ウォーターカラーハーフパン12色¥2,200(amazon)
ウィンザー&ニュートンのハーフパンカラーは、伝統的な顔料と新しい顔料を組み合わせた水彩絵の具です。
全40色に加え、8色のメタルカラーが加わりました。
いろいろ探してみると安価なものもありますね。
気になるケーキカラーの価格
私はケーキカラーの方が固形容器のサイズが大きいので使いやすいと感じています。
私のおすすめはホルベイン製品です。
もともと12色で描き始めたので24色を持っておらず、紫系統は別のチューブ絵の具をパレットに出して使っていました。
私の好きな紫入りで24色がわずか3,000円台(もともとは¥6,600)で購入できる時代になっていて驚いています。
早速24色も購入してみたいと思います。
ホルベイン透明ケーキカラー24色¥3,304(amazon)
私の好みから言うと、赤系統がクリムソンとカーマインは深紅なのでどうしても暗い感じがします。
明るく鮮やかなウィンザーレッドなどを別購入が必要かなと思います。
緑系統では、ビリジャンヒューとライトグリーンの間にフーカスグリーンがあって、風景を描くのには助かります。
が、やっぱりサップグリーンやオリーブグリーンは別に欲しいなと思います。
Shuttle Art 48色セット ブラシ13本 ¥1,699(amazon)
このShuttle Art 48色は破格値だと思います。
筆だけでもこんなについてくるんだったら買いたくなってしまいますよね。
混色が苦手な初心者にはいいかもしれませんね。
ただ、絵の具は追加購入ができないと思うので、好きな色が空になったら似た色をチューブで購入して自分好みに少しずつ変えていくのも楽しみの一つになるかもしれないですね。
水彩画初心者【絵の具の選び方 その3】セット購入 VS 単色購入
では、3つ目の観点です。絵の具は、3原色と呼ばれる色(赤マゼンタ(レッド)・青シアン(ブルー)・黄色イエロー)と、白黒の合わせて5色あれば十分絵を描けると言われます。
ですが、絵の具の最大の欠点が潜んでいます。
それは、「減法混色」です。混色すればするほど「濁る」と言う絵の具の欠点です。
それなら色数の多いセット購入で混色しないで描くのがいいのか、それとも多少の濁りは我慢して少ない絵の具で混色しながら描くのがいいのか、互いのメリットとデメリットを出し合ってみましょう。
セット購入のメリット・デメリット
【メリット】
😍 メーカーのおすすめ絵の具だよ。初心者にはベストじゃん!
😁 絵の具が散らかんなくて良いな。
😁 色が揃ってるとパレットで混色するのが少なくていいよ。
【デメリット】
😨 それでも、好みでない使わない絵の具は、残る💦
単色購入のメリット・デメリット
【メリット】
😘 自分好みで選べていいじゃん!
🥰 経済的だよ~。別に欲しくなったら買い足してOKです~。
【デメリット】
😨 ばらで買った絵の具のチューブをどこに置こうかな…??
😱 調子に乗って買い込んだら、とてつもない量になっちゃった💦
まとめ
初心者向けの絵の具選びについて、色々説明してきました。いかがでしたか。
透明水彩絵の具は、水で薄めてにじませたりする技法がよく使われます。ですから、大画面でない限りは、少量の絵の具から出発でも構いません。
また、1回1回チューブから出してフタをしてという手間を省き、パレットに固めて固形絵の具にして使うというプロの方も増えています。
チューブ絵の具が良いか、高級感のあるパンカラーまたはケーキカラーが良いか、選択は自由ですので、価格や色数など、多方面から考えて自分にあった絵の具を選んでください。
私のおすすめを下記に記したのでそれも参考にしてください。
💠 チューブ絵の具派の人 💠
・ホルベインの18色セット(5号15ml)がオススメ。
・パレットに固めて使用する。
・野外スケッチでも使える。
・他に欲しい色があったら単色購入して、パレットに固める。
・パレットは、24色以上の仕切りがある物を購入する。
💠 パン・ケーキ派の人 💠
・ホルベインの24色ケーキカラーセットがオススメ。
・追加で¥550のシャーレを購入すると、セットの底と合体させて2階建てにできる。
・さらに追加すると、筆箱が高くなっていくように、3階建4階建…と合体していける。
・好みのケーキカラーは単品¥275で購入できる。
・不透明色のケーキカラーも収納可能。
・持ち運び便利。野外スケッチに出かけよう!
🤡 知って得する<個性的な絵の具>情報 👻
💠 ホルベインの紹介 💠 (HOLBEINのHPより)
🎨「ルミナスカラー」
・蛍光色で、ブラックライト照射で夜間発光します。混色可能。
・ただし、固形化させて使うと溶けにくい。使うときはチューブから出した方が良い。
・5ml¥330で、15ml¥660。15mlがお得。
・ホルベインにはその他にも…
🎨「イリデッセントカラーズ」
・キラキラ輝く絵の具。
・クロマシャイン8色+クロマパール8色=全16色。
🎨「グラニュレーティングカラーズ」
・穏やかな色の分離が特徴。
💠 クサカベの紹介 💠 (KUSAKABE HPより)
🎨「ハルモニア透明水彩絵の具」
・水を多くして塗ると、異なる顔料が分離しつつ幻想的なざらつきのある質感を生み出し綺麗です。
・全24色で1本4号(10ml)¥825です。
・ハルモニア透明水彩絵の具4号(10ml) 12色セットで購入できます。
🎨「シングルピグメント透明水彩絵具」
・インクのような色合いの「ステイニングカラー(6色)」と粒状化のマチエールを生み出す「グラニュレーションカラー(12色)」の構成です。
・全18色で1本4号(10ml)¥605です。
💠 ターナーの紹介 💠 (ターナー色彩株式会社 HPより)
🎨「マヤシリーズ」
・ターナーの透明水彩絵具は、日本国内版では全54色(普通色47色、マヤシリーズ7色)の色数で、海外では全148色あります。
・赤…太陽や火、黄…豊穣と生命力、緑と青…神聖 を象徴する古代マヤ文明の色彩を再現。
このHPでは、水彩画を中心に、絵に興味のある人の疑問(材料や道具の選び方や使い方、水彩画の技法など)に答える内容を紹介します。
その他にも、アクリル画や油彩画、漫画、イラスト、切り絵、デッサンなど、美術全般の指導書としてもやさしくていねいに学べるHPです。
ぜひ別の記事でも楽しく学んでいただければと思います。
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