透明水彩で自然な肌色を作るには、
最初の一層目の色選びがすべてを左右します。
こんにちは。画家のマキノ ロランです。
透明水彩初心者の方に向けて、
水彩画の基本と魅力をお伝えしています。

透明水彩で人物を描こうとしたとき、
「肌色が不自然になる」
「なぜかくすんでしまう」
そんな経験はありませんか。
チューブの肌色をそのまま使っても、
白を足して明るくしても、
本物の肌のような透明感が出ない——
その原因の多くは、
最初に塗る一層目の考え方にあります。
透明水彩の肌色づくりが難しいのは、
・最初に置く色の方向性
・重ね塗りの順序
この2つを理解しないまま進めてしまうからです。
この記事では、
白を使わず紙の白を活かす肌色の基本構造と、
三層で考える重ね方の順序を、実例を交えながら解説します。

・白を使わず紙の白を活かす基本構造
・最小限の色で血色と立体感を出す方法
・三層構造の順序と、重ねるときの水量の考え方
Contents
なぜ透明水彩の肌色が難しく感じるのか

私は、透明水彩で
人肌の色を塗るのがとても苦手です。
モデルを見て塗る時、濃い色を使い、
色を濁らせ失敗を繰り返しました。
修正するために明るい色を上に塗り重ねて、
透き通った感じを失いました。
気づけば、不透明水彩絵の具の塗り方をしていました。
透明水彩絵の具は「透明」が持ち味。
水彩紙の白を利用しなければならない前提があります。
白を混ぜず、薄いウォッシュを重ねることで
色の深みや光沢を表現する透明水彩。
透明水彩は、ここが本当に難しいんですよね。

この記事では、白を使わない前提でお話をしていきますね。
では、
「どんな色を塗り重ねていけばいいのか?」
その疑問は
これからの解説で解決していきましょう。
・肌色は一発で塗り切ろうとしない
・紙の白さを活かすには混色しすぎて濁らせない
なぜ明るい肌色に白を使わないのか

透明水彩で明るい肌を描こうとすると、
多くの人が白を足そうとします。
しかし透明水彩では、
その方法が透明感を失わせる原因になります。
透明水彩の明るさは、
絵の具の白さではなく
「紙の白さ」によって生まれます。
紙の白を残し、
その上に薄い色を重ねることで、
内側から光るような明るさが生まれるのです。
白を混ぜた絵の具は不透明になり、
紙の白を覆い隠します。
その結果、肌は平坦に見え、
奥行きや深みが失われます。
明るい肌を描くために大切なのは、
白を使うことではありません。
紙の白を活かすこと。
これが透明水彩で肌を描くときの基本原則です。
透明水彩における「明るさ」の正体

透明水彩で言う「明るさ」とは何か。
それは、どれだけ紙の白を活かせているか、ということです。
まず紙の白をハイライトとして確保します。
その上から淡いウォッシュを重ねます。
紙の白が下から透けることで、明るさは保たれます。
一方で、白を混ぜた色は紙を覆い隠します。
不透明になった瞬間、
透明水彩の魅力である光の抜けは失われてしまいます。
明るさは「足す」ものではなく、「残す」もの。
この考え方が、肌色づくりの土台になります。
肌色に隠された3つの層

肌色づくりの合言葉は「3つの層」です。
① 明るさの層 … 紙の白(またはごく薄い黄色系)
② 血色の層 … 赤みや温度感
③ 影の層 … 深みと立体感
透明水彩では、
明るさの層に、深みの層を
下から順に重ねていきます。
最初に、黄色系のごく薄いウォッシュで
明るさの方向性を決めます。
次に、赤みを部分的に重ねて血色を加えます。
最後に、影色を最小限入れて立体感を整えます。
実際の制作では、
同じ役割の層を何度か繰り返して
微調整することもあります。
ただし原則は一つ。
常に、下から紙の白が
光として透けている状態を保つこと。
これが、白を使わずに明るい肌を描くための核心です。
・最初はごく薄く、広く塗る
・層ごとに目的を決める(下地/血色/影)
・一層ごとに乾かしてから次へ進む
透明水彩の肌色に使いやすい基本の色

ここからは、
「3つの層」で使いやすい基本色を整理します。
大切なのは、
色名を覚えることではありません。
各層で“何を目的に置く色なのか”を理解することです。
以下では、透明水彩の基本色を
三層構造(下地・血色・影)に分けて整理していきます。
ホルベイン透明水彩24色セットの中から、
肌色づくりで使いやすい基本の色を選び、
それぞれの役割や使い方のポイントを整理しています。
まずは、全体像を掴むつもりで、読み進めてみてください。
※色名の暗記は必要なし!
●第一層(明るさの土台)
〜 黄色系を主軸に、ごく薄く 〜
この層は、最終的にほとんど見えなくなります。
しかし、完成時の光の通り方を決める重要な層です。
| 色名 | 役割・使い方 |
| パーマネントイエローレモン | これを基本色として、肌全体の明るさの土台とし、白に近い肌色の下地として扱う。慣れてきたら、ローズマダーを少量加えオリジナルの肌色ベースを作る。 |
| ジョンブリアンNO 2 | 化粧肌の下地として、または、温かみのある肌を表すために、均一に塗ろうとせず、わずかな濃淡を残す。 |
| イエローオーカー | 落ち着きのある肌の土台となる色。紙の白を活かして薄い明暗をつける。 |
単色購入をお勧めできるのは、次の3色です。
・シェルピンク
・ジョーンブリアンNo.1
・ピロールレッド
●第二層(血色)
〜赤みは「混ぜる」のではなく「重ねる」〜
必要な部分に、薄く数回に分けて重ねます。一度で赤くしようとしないことが透明感を守るコツです。
| 色名 | 役割・使い方 |
| クリムソンレーキ | 頬などの血色が強い部分に重ねる。濃くなりやすいので薄めに調整していく。少量のパーマネントイエローレモンと混色して使ってもよい。 |
| ローズマダー | 肌に自然な赤みを足す基本色。薄く重ね、内側からにじむ血色を表現する。少量のパーマネントイエローレモンと混色して使ってもよい。 |
| バーミリオンヒュー | 温かい赤みを足したい時に使用する。子供や健康的な表情を描くときに使いやすい。 |
| ライトレッド | 暖かみのある褐色系の肌を描きたい時の補助的な色として使う。多用しない。肌が赤くなりがち。 |
単色購入をお勧めできるのは、次の1色です。
・ピロールレッド
※イエローオーカーとの混色でオレンジ系
●第三層(影)
〜影は「暗い色」ではなく「光の少ない場所の色」〜
青や紫を極薄で使うと、肌の明るさを保ったまま立体感を出せます。
| 色名 | 役割・使い方 |
| コバルトブルーヒュー | 薄く溶いて茶系(バーントシェンナなど)の色と混色しながら使う。ウルトラマリンより柔らかい影を作りたい時は、単色で使うと美しい影色が作れる。 |
| ウルトラマリンディープ | 青みのある影を作る基本色。ごく薄く使い、影に深みを出す。茶系(バーントシェンナなど)の色と混色して使うのもよい。 |
| バーントシェンナ | 一層目のパーマネントイエローレモンに混色して肌色を作る。 三層目では赤みのある影を出すときに重ね塗りする。頬や首周りに使用しやすい。青系の色と混色して自然な影色を出すことも可能。 |
| バーントアンバー | 暗めの肌の影色に使う。青系の色と混色して自然な影色を出すことも可能。 |
| ミネラルバイオレット | イラスト的な肌の影色。影の色を混色して作るのが苦手な人向け。目元や輪郭に薄く使うのもよい。 |
単色購入をお勧めできるのは、次の3色です。
・フタロブルーレッドシェード
・フタロブルーイエローシェード
※フタロブルーはピロールレッドと混色で紫系
・ペインズグレイ
パーマネントイエローレモン/ローズマダー/バーミリオンヒュー/バーントシェンナ/ウルトラマリンディープ
水の量で明度を操作すれば、この5色だけでも十分に表現可能です。
第一層目は「肌の方向性」を決める層

第一層目は、
明るさと色の方向性だけを決めます。
ただし、黄色一色のウォッシュに不安を感じる場合は、
ごく少量の赤や茶を含ませても問題ありません。

たとえば、
- パーマネントイエローレモン+ローズマダー(極薄)
- パーマネントイエローレモン+バーントシェンナ(極薄)
- イエローオーカーを十分に薄めたもの
これらはすべて、
第一層目として成立する色です。
🎨 透明水彩で肌色を作るための基本色パレット 🎨
下に、パーマネントイエローレモンや
バーントシェンナとの混色比較表を作りました。
どの色が肌色に合っているか、
図で確認してみましょう。


このように様々な肌色ができます。
しかしこの段階では、
「肌色に見せる」ことを目標にしなくて大丈夫です。
次の層で、
少しずつ人らしさを足していきましょう。

薄く塗れば紙の白が生かされるので、
肌の明るさを支える下地として、非常に優秀な色なんですね。
これは大事です!覚えておきましょうね。
赤みは「混ぜる」のではなく「重ねて表現する」

肌の赤みを、最初から混色で作ろうとすると、
色はどうしても重くなりやすくなります。
透明水彩では、
赤みはあとから、
必要な分だけ重ねるという考え方が基本になります。
「赤い肌色」を作るのではなく、
バーミリオン・ヒュー、
クリムソンレーキ、
ローズマダーなどで、
「赤みが感じられる層」を足す意識が大切です。
頬や耳、唇など血色の出したい箇所に
薄く透明な赤系を重ね、
自然な感じを出します。
赤みを重ねる方法は、
経験値によっておすすめしたいやり方が異なります。
ただし、赤みは、
足すことよりも、
足しすぎないことを意識してください。
影色に青や紫を使うと肌が自然に見える理由

影の部分を塗るとき、
黒や濃い茶などを使って、
無機質で重たい感じになった経験はありませんか?
私も、結構こげ茶色などを使って濁らせていました。
では、黒や濃い茶色でなければ、
どんな色がいいのか?
考え方のポイントは、
透明水彩での影を「暗い色」として見るのではなく、
「光の少ない場所の色」として見るということです。
そこで、黒やこげ茶色などを使わず、
青や紫を薄く使います。
そうすることで、
肌の明るさを保ったまま影を表現するのです。
肌の影色に青や紫を使うと自然に見えるのは、
皮膚の奥で血管や皮下組織が作る
冷色のニュアンスを再現できるからなのです。
また、薄くグレイッシュなウォッシュを重ねることも効果的です。
影は、肌を暗くするためではなく、
光を感じさせるために使います。
必要な分だけ、
最後にそっと加えていきましょう。
・影を局所的に使って立体感を意識する
ここまでで、
肌色に使う色の役割が
見えてきたのではないでしょうか。
次は、これらの色を
どの順番で、どのくらい薄く重ねていくのか
実際の描き方を見ていきたいと思います。
肌色を作る基本の重ね方と順序(動画あり)

肌色づくりは、次の三段階です。
合言葉は「3つの層」。
① 薄い黄色系で広く下地を置く
② 血色を部分的に重ねる
③ 影色で立体感を整える
最初の層では
「肌色に見せよう」としなくて構いません。
明るさの方向性を決めるだけで十分です。
乾燥 → 重ねる → 乾燥
このリズムを守ることで、
透明感は維持されます。
透明水彩で大切なのは、
一度で完成させようとしない勇気です。
また、描き方に絶対の正解はありません。
まずはこの三層構造を体験し、
そこからご自身の描き方へ育ててください。
・混色による濁りを防ぐこと
・レイヤーごとに乾燥を待つこと
・筆の水分量を調節して境界を滑らかにすること
一層目では「肌色」に見せなくていい
実際に顔全体へ一層目を置く様子を、
30秒の動画で確認してみましょう。
最後にふき取りをします。
明・中・暗の方向性に注目してご覧ください。

このように、ほとんど水の層に、
ほんのり色を含ませる感覚です。
紙の白を残す意識が、次の層の透明感を支えます。
水の割合の目安:やや多め
紙の種類:アルビレオ中目151g
しつこいようですが、
第一層はあくまで「下地として扱う」
これが成功の秘訣です。
この段階で無理に血色を作ろうと濃くしない。
理由は、後で色の調整が難しくなるからです。
一層目の役割は、
明るさと色の方向性を決めること。
完成を目指さず、
軽く色を置いて乾かします。
ハイライトは、色を塗らず、
紙を真っ白にしておきます。
・薄い黄色系で、明度と方向性だけを決める
・紙の白を活かす
二層目で血色と立体感を育てる
次は顔全体へ二層目を置く様子を、
1分25秒の動画で確認してみましょう。
38秒の所から2度目の重ね塗りをしています。
徐々に色味が増す雰囲気に注目してご覧ください。

二層目では、
頬や耳、唇、額や顎などに
薄い赤やオレンジを重ねて血色を作ります。
赤みや少し濃い色を使って、
顔の起伏を意識していきます。
ここでのポイントは
色を薄く何度も重ねることと、
乾いた後に境界をソフトにぼかすことです。
また、
色を薄くしていくグラデーションを意識すると
自然な立体感が生まれます。
薄い色を数回に分けて重ねるのがポイントです。
透明感を維持するために、
色が少し足りないくらいで止めるといいと思います。
💁🏻♀️ 初心者向けの方法
初心者の方は、一層目を完全に乾かします。
その上に、薄く溶いた赤系の色を
点状~面状にそっと置き、
そのまま触らずに乾かす方法がおすすめです。
色が多少濃く見えても、
乾くと自然に落ち着いてきます。
乾燥後に無理にぼかそうとすると、
せっかく整えた色の面が崩れてしまうことがあります。
まずは「置いた色をそのまま受け入れる」感覚で、
血色の変化を観察してみてください。
💁🏻♂️ 中級者向けの方法
ある程度水加減に慣れてきたら、
一層目を乾かしたあと、
紙の表面を清水でごく軽く湿らせ、
赤系の色を置いて自然ににじませる方法にも挑戦できます。
この方法では、
赤みが急に止まらず、
肌の内側からにじむような
柔らかい血色を作ることができます。
ただし、水が多すぎると
色が広がりすぎてしまうため、
「湿っているかどうか分からない程度」を
目安にしてください。
【中級者】一層目乾燥後、紙をごく軽く湿らせる 赤を置いて自然なにじみで血色を作る
次は、肌の立体感を支える「影」の考え方を見ていきましょう。
影色は最後に、必要な分だけ
影色に入る前に、
髪の毛と目を一度塗っておき、
画面全体を引き締めておきます。
影色を入れる前の
髪の毛と目を塗っていくところを
1分20秒の動画でご覧ください。
ここでは、バーントアンバーとウルトラマリンディープを使いました。
影色は最後の段階で調整していきます。
最小限の量を薄く重ねることで
顔の形や光の方向を明確にします。
肌を自然で透明感のある仕上がりにするために、
全体の色味が整ってから、
必要な部分にだけ影を加えます。
青や紫の絵の具は、
ごく薄いウォッシュで塗ります。
徐々に濃度を上げるようにします。
反射光を意識して、
少し輪郭より内側に色を差し込む意識を持つとリアル度が増します。
ここからは完成までの工程を
5分17秒の動画で一気に紹介します。
1分27秒から影色を入れていきます。
その後改めて二層目の血色を加味します。
最後に目を調整して完成させています。

輪郭線:バーントアンバー
影色:ウルトラマリンディープ
唇:バーミリオンヒュー、ローズマダー
・明暗の境界が硬くならないようにぼかす
・必要に応じて少量のバーント・シェンナなども使用する
まとめ|紙にも肌色があり、同じ白ではない

今回は、
透明水彩で肌を明るく見せるための考え方と、
白を使わずに重ねていく基本構造について解説しました。
透明水彩の肌色づくりは、
明るさ → 血色 → 影
の順で重ねます。
合言葉は「3つの層」。
・明るさは紙の白で作る
・赤みはぼかしながら重ねる
・影は最小限に
うまく描けないと感じたときは、
順序と層の役割を見直してみてください。
そして、もう一つ重要なのが
紙の選び方です。
みなさんは、紙はすべて同じ「白」だと思っていませんか?
実は、紙にもわずかな色温度の違いがあります。
紙の白さや吸水性は、
仕上がりの透明感を大きく左右します。
今回の肌色づくりを安定させるためにも、
水彩紙ごとの白さや吸水性の違いを一度整理しておきましょう。
→ 水彩紙の選び方と種類の比較はこちら
紙選びは、透明水彩上達の土台です。
ぜひ一度、じっくり比較してみてくださいね。

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実際の重ね方を見ながら、一緒に確認していきましょう。