みなさん、こんにちは。画家のマキノロランです。
チューリップの花に包まれてとても気持ちがいいです。

チューリップは一見シンプルな花ですが、
透明水彩で描こうとすると
「形が単調になる…。」
「色がベタ塗りになる…。」
「立体感が出ない…。」
と悩む方がとても多いモチーフです。
この記事では、透明水彩初心者の方でも理解しやすいように、
・下描きでの「形の捉え方」
・透明水彩ならではの「色の重ね方」
・初心者が「失敗しやすいポイント」
などの困りごとを体系的に解説します。
一輪のチューリップを美しく描ける力をつけて、
春の花全般を描く力につなげましょう!
Contents
🌷 1|チューリップを水彩で描く前に知っておきたい基本

初心者は、絵を描くモチーフ(対象)を目の前にした時、
・どんな想いを込めて絵を描こうかな?(主題の悩み)
・どんなふうな描き方をすればいいのかな?(構想や技法の悩み)
を持つものです。
このセクションでは、
・チューリップの形の特徴。
・初心者がつまずきやすいポイント。
・初心者に向いている理由。
・写真と実物、どちらを参考にすべきか
をチェックしていこうと思います。
自分がどんな点につまずきやすいのかを振り返ってみましょう。
1-1|チューリップの形の特徴(他の花との違い)

目を閉じてチューリップの花弁を想像してみましょう。
どのような構造をしているか?
答えは、
「多くの場合、完全には開ききらない“包み込む構造”として観察できる」
という点です。
ここで言う「包み込む構造」は、
すべての品種や状態を説明するための定義ではなく、
透明水彩で形を理解しやすくするための
“観察の出発点”です。
もちろん、チューリップには品種や環境によって、
大きく開くもの、星形に近いもの、釣り鐘のように見えるものなど、
さまざまな咲き方があります。
しかし、透明水彩で形を理解し、描きやすくするためには、
まずは
「花びらが外へ反り返る花」ではなく、
「中心を包むように面が重なっている花」
として捉えることが、とても有効です。
1-2|初心者がつまずきやすいポイント

初心者がチューリップを描き始めようとすると、
共通して失敗する点がいくつかあります。
あなたも共感する部分はありませんか?
・左右対称に描きすぎて不自然になる
・花の長さより、茎や葉の長さが短くなる
・茎の延長線上に花の中心軸がなく、花が不自然に乗ってしまう
(チューリップの花は、茎の先に「乗っている」のではなく、茎の流れがそのまま花の中心へと続いています。)

これらの失敗は、センスの問題ではありません。
ほとんどの場合、
「見ているポイント」や
「生きているチューリップの性質」
を知ることで改善できます。

1-3 初心者に向いている理由

「チューリップは簡単そうに見えて、実は難しい」
そんな声をよく耳にします。
確かに、花びらの枚数が少なく、
装飾的な要素も少ないため、
ごまかしが効きにくい花ではあります。
しかし、透明水彩という画材に限って言えば、
チューリップは初心者にとても向いているモチーフです。
理由は、形が大きな面で構成されており、
色のにじみや重なりが、そのまま立体感として表れやすいからです。
細かい描写を頑張らなくても、
「水彩らしい表現」が成立しやすいのです。
つまり、
描き方のポイントさえ押さえれば、
初心者でも“きれいに見える一枚”を作りやすい花だと言えます。
「チューリップ 水彩 難しい」と感じている方ほど、
透明水彩の特性を活かせば、描きやすさを実感できるはずです。
1-4|写真と実物、どちらを参考にすべきか


チューリップを描く際、
「実物を見ないといけませんか?」という質問をよく受けます。
結論から言えば、
初心者のうちは写真資料で十分です。
ただし、どんな写真でも良いわけではないんですね。
透明水彩で立体感を出すためには、
光の向きがはっきり分かる写真を選ぶことがとても重要!!
逆光や強い加工がされた写真は、
花の面の起伏や影が分かりにくく、
結果として平面的な仕上がりになりがちです。
まずは、
・光が一方向から当たっている
・花びらの重なりに影が落ちている
このポイントを押さえて写真を選ぶだけで、
描きやすさは大きく変わります。
難しく考えず、
「陰影が感じられる写真」を一枚選ぶ。
それだけで、下描きも着彩も驚くほど楽になるはずです。
🌷 2|透明水彩で失敗しないチューリップの下描き

このセクションでは、
透明水彩で失敗しないチューリップの下描きはどうあるべきかを、
4つの視点で解説します。
まずは、描く前に見る順番や
下描きを描き込みすぎない考え方などを整理しましょう。
2-1|下描きは「花びら」ではなく「かたまり」から考える

チューリップの下描きで、最初に描くべきものは
実は「花びら一枚一枚」ではありません。
まず意識したいのは、
花全体がどんな立体のかたまりとして存在しているかです。
チューリップは、
・丸みのある卵型
・少し縦に伸びた楕円体
このような立体をベースに当たりを取ると、形が安定します。
チューリップの形を決めつけるためのものではありません。
あくまで、立体を安定させるための“仮の器”として考えてください。
また、いきなり花びら一枚一枚の輪郭を追ってしまうと、
全体のボリューム(シルエット)が崩れやすく、
後から修正する手間が増えます。
下描きの段階では、
「細部に踏み込んだ線」を先に描く前に、
「立体としての存在感」を優先して描きます。
その際、鉛筆を「図2-1」の右側の図のようにつかんで描いてみると、
ラフな感じの線が描きやすくなります。
2-2|正面と斜めで理解するチューリップの基本形

チューリップの形は、
見る角度によって印象が大きく変わります。
下描きの理解として押さえておきたいのは、
主に次の2つの視点です。
ひとつは「正面」。
花の中心軸がまっすぐ見え、
全体が安定した形として捉えやすいため、
基本形の理解と練習描きに向いています。
もうひとつは「斜め」。
花びらの重なりや、
前後の面のズレがはっきり見え、
立体感を学ぶのに最も効果的な視点です。
初心者の方は、
正面で描く練習をまず頑張って、その後、
少し角度をつけた斜めの形の練習に入りましょう。
向こう側の花びらが見えることで、
チューリップの奥行きがぐっと感じられるようになります。
さらに、開花した状態が大きいチューリップになると、
奥行きに広がりが出て、
変化を楽しみながらチューリップを描くことができます。
なお、真上から見た視点では、
チューリップは、万華鏡でのぞいたような、
まったく別の表情を見せます。
まるで曼荼羅模様です。

この視点は、慣れてきてからの観察として、
頭の片隅に置いておく程度にしましょう。
2-3|立体感を壊さないための下描き3つの注意点

下描きの段階で、
花の立体感を失わせてしまう原因は、
実はとてもシンプルです。
特に注意したいのは次の3点です。
① 輪郭線を均一に強く描きすぎないこと
輪郭線そのものが悪いわけではありません。
問題になるのは、ペン画のように
すべての線を同じ強さで描いてしまうことです。
光が当たる側は弱く、
重なりや影になる部分はやや強く。
線にも強弱をつけることで、
花びらの丸みや前後関係が自然に伝わります。
② 左右対称を意識しすぎないこと
チューリップは一見左右対称に見えますが、
実際には、
花びらの重なりや角度によって、
必ず微妙なズレがあります。
左右を揃えすぎると、
形は整っていても、
立体感のない「記号」のような花になってしまいます。

③ 花と茎を「別の形」にしない意識を持つ
チューリップの花びらの付け根は、
正面から見ると、はっきり見えないことも多い部分です
ですので、
下描きで無理に
「接続部分を正確に描こう」とする必要はありません。
ここで大切なのは、
花と茎が、別々に存在しているように見えないこと。
茎の流れがそのまま花の中心へ続いている、
そんなイメージを持って下描きをすると、
花びらの立体感も自然安定します。
見えない部分は、
描かなくても構いません。
考えておくことが、立体感につながります。
花びらの立体感を描く場面では、
花と茎の接続部分が見えない時は
無理に描き込む必要はありません。
2-4|線を描き込みすぎない下描きの考え方(補足)

透明水彩では、
下描きの線がそのまま作品の印象に影響します。
描き込みすぎた下描きは、
色を重ねたときに線が邪魔をしてしまい、
水彩特有のやわらかさを損ねてしまいます。
また、色を濁らせる原因ともなりかねません。
「これは本当に必要な線か?」
と自分に問いかけながら描くことで、
下描きはぐっと洗練されていきます。

下描きは、
完成させるための絵ではありません。
色が気持ちよく乗るための準備段階なのです。
🌷 3|透明水彩でチューリップに立体感を出す着彩の基本

透明水彩でチューリップを描くとき、
多くの人が「色選び」で立ち止まってしまいます。
ですが、実は
立体感を左右するのは
色のセンスではなく、塗る順番です。
透明水彩では、
・一度で完成させようとしない
・乾かし、重ね、少しずつ育てていく
という考え方がとても重要になります。
このセクションでは、
チューリップを立体的に見せるための
基本となる着彩の流れを、
4つのポイントに分けて解説します。
3-1|最初の色は「一番明るい色」から置く

みなさんは、透明水彩の最初の色は、
どんな色を置くべきだと考えますか?
最初から、完成後の色を塗ろうとしていませんか?
まず使うのは、
「この花の中で一番明るい色」です。


最初に明るい色(彩度の高い色)を置く理由は、
透明水彩では
**「白は紙の白で表現する」**からなのですよ。
ここで濃い色を置いてしまうと、
後から光を取り戻すことができません。
だからこそ、
「まだ薄すぎるかな?」
と感じるくらいで、ちょうど良いのです。
チューリップの場合、
・花びらの光が当たる面
・白っぽく透けて見える部分
ここを意識して、
薄く、均一に、1度だけ、色を置きます。
これを「平塗り(wash)」と言います。
この最初の鮮やかな色が、
後の立体感の土台になります。
3-2|影は「塗る」のではなく「重ねて生まれる」

影を描こうとして、
最初から濃い色を使っていませんか?
透明水彩では
影は「後から足すもの」ではなく、
色を重ねた結果として生まれるもの です。
1度目の色が乾いてから、
同系色をもう一度重ねる。
それだけで、
自然な陰影が現れます。
なぜなら、同系色は、透明感が保たれ、立体感が壊れにくいからです。
面の切り替わり部分にだけ
同系色を重ねた瞬間、
チューリップは
線ではなく、面として立ち上がってきます。
この瞬間こそが、
透明水彩で立体感が生まれるポイントです。
無理に影色を作らなくても、
透明感のある立体は十分に表現できます。
このように乾いた上に色を重ねて透明感を出す技法を
重色(じゅうしょく/wet on dry)と言います。
慣れてきたら、
影の一部に補色に近い色をほんの少し混ぜることで、
深みのある表現にも挑戦できます。
3-3|花びら1枚ずつ塗らない理由

チューリップを描く時、
花びらを一枚ずつ丁寧に塗りたくなります。
なぜなら、
花びらを一枚ずつ塗りたくなるのは、
「塗らないと未完成に見える」
という不安があるからです。
しかし、なんとしたことか、
それが立体感を失わせる原因にもなることも多いのです。

なんか未完成みたいで途中で見られるのが恥ずかしいですっぴ~💦
ていうか、バラバラな感じになっちゃったですっぴ〜💦
チューリップの花びらは、
最初から「面」として感じ取られていることがほとんどです。
その感覚を大切にし、
まず全体を淡くまとめます。
そこから少しずつ面の違いを育てていく方が、
透明水彩らしい仕上がりになります。
それが出来るようになってきたら、
使う筆を面相筆などに変えながら、
徐々に細部の表現へと筆を進めます。
3-4|色数を増やさない方が、うまく見える

「色をたくさん使った方がうまく見える」
そう思っていませんか?
実は、一色で咲いているチューリップは、
色数が少ない方が、かえって美しく見える ことが多いのです。

僕、きれいにしようと思って、
いっぱい色を混ぜてたですっぴ~💦
チューリップの着彩に必要なのは、基本的にこの2つだけです。
-
メインになる明るい色
-
それより少し暗い、同系色
この2色を
乾かしながら、少しずつ重ねていく ことで、
にじみや重なりが生き、
透明水彩らしい立体感が自然に生まれます。

透明水彩で立体と空気感を表現するための、
とても合理的な選択なんですよ。
3-5|固有色が2色以上あるチューリップの場合は?

「花の先がピンクで、内側が黄色」
そんなチューリップもありますよね。

最初から全部の色を使わなきゃダメですっぴか?
いいえ、そんなことはありません。
固有色が複数ある場合でも、
最初にすることは同じ です。

まずは、
「いちばん明るく見える色」を
全体に、薄く、やさしく置きます。
そこから、
別の色を
順番に・必要なところだけ
少しずつ重ねていく。
この流れを守ることで、
色数が増えても濁りにくく、
透明水彩らしい立体感が保たれます。
🌷 4|まとめ

チューリップは、
「きれいに描こう」と思うほど、
色数を増やし、何度も描き足して濁らせ、
手が止まってしまう花かもしれません。
でも、それはあなたのセンスの問題ではありません。
透明水彩という絵の具は、
最初の一手で答えを出す画材ではないのです。
乾かし、重ね、少し時間を置きながら
ゆっくり形を育てていく画材と言えます。
下描きの段階では、
「ここまで完璧にしなければ」と気負いすぎずとも大丈夫。
下描きは完成図ではありません。
あくまでも、
色が迷わず進むための“道しるべ”のようなもの。
色を置いてから
「あ、ここは少し暗かったな」
「この面、思ったより光が当たっているな」
と気づくことも、すべて正しい過程です。
うまく描こうとしなくて大丈夫です。
今日描いた一輪は、
次の一輪を描くための準備になっています。
まずは、
一輪のチューリップと、
静かに向き合うところから始めてみてください。
やがて、たくさんの技法に出会って、
あなたらしい個性的な作品に育っていくことと思います。

① 花を「面」で捉える、② 少しずつ色を塗って育てていく、③ 立体感は重なりで生まれていく、こういうことが大事なんじゃの。
「もう少し複雑な形にも触れてみたいな」
と感じたら、
花の構造が少し違うバラ(薔薇)の記事も、
次の一歩としておすすめします。
描き直しではなく、
「活かす修正」を知っておくと、
水彩はぐっと楽になります。
「明るいところを白く戻せないかな…」
と修正してみたいときは
マスキングやリフティングなど
技法満載(なんと28種類)の記事もおすすめです。
▶︎水彩画の技法28種類まとめ|初心者から上達まで使える基本・応用テクニック集

その他にも、アクリル画や油彩画、漫画、イラスト、切り絵、デッサンなど、美術全般の指導書としてもやさしくていねいに学べるHPですぴー。
ぜひ別の記事でも楽しく学んでいただければと思いますぴー。













