水彩でバラを描こうとしたとき、
「どこから描き始めたらいいのかわからない」
「下描きの時点で手が止まってしまう」
そんな経験はありませんか。
こんにちは。画家のマキノ ロランです。
私は、水彩画初心者の方の悩みに寄り添う、
自称「心の優しい画家」です。
透明水彩初心者のために、
水彩画の魅力を伝える連載を続けています。

前回の記事【水彩でバラを描く方法|初心者向け・形と色の描き方解説】では、
バラが難しく感じる理由や
形をシンプルに捉える考え方についてお話しました。
今回はその続きとして、
水彩でバラを描くための下描きを進める
具体的な手順を解説していきます。
難しい技術は必要ありません。
大切なのは、
「迷わない下描きの手順」と
「失敗を立て直す考え方」を知ること。
バラは複雑に見えますが、実は単純な図形の集合体です。
手順通りにやれば、絶対に形は歪みません。
このページでは、
水彩画初心者でも安心して描き出せるように
バラの下描きを 3つの段階に分けて、
やさしく整理していきますね。
下描きを始める前に整えておきたいこと

まずは下描きをどう考えるか?
透明水彩画における下描きは、
「上手く描くための作業ではない」
という前提でお話しします。
「迷わずに色を置くための道しるべ作り」と考えます。
この章では、下描き前に整えておく
① バラの見方、② 構図の考え方、③ 準備する鉛筆について整理していきます。
写真を見る前に、まず「一輪」を決めよう

バラを描き始めるとき、
みなさんは、写真を見て描きますか?
それとも実物を見てスケッチしていきますか?
もし可能であれば、
まずは一輪のバラを手に取ってみてください。

香りを感じ、
横から、上から、少し離れて眺め、
花びらの重なりや、中心の深さを観察します。
この段階では、
「正確に描こう」としなくて大丈夫です。
大切なのは、
どの角度からこのバラを描きたいのか、
そして、
そのとき自分は何を感じているのか
という「視点と思い」を決めることです。
そのあとで写真を見て描くにしても、
バラが纏う情報に振り回されにくくなります。
① 切り花として購入したバラは、1日で花びらの開き方が大きく変化します。
写真を撮っておくと助かります。
② バラの花がつく枝の別れ方は2種類あります。
「一輪咲き」(花枝1本に花一輪)
「房咲き」(花茎複数で花複数)
一輪咲は花が大きいです。
房咲きは花が小さく数が多いです。
注意事項にもありますが、
初心者がバラを描く時は、
まずは花枝に一輪咲きのバラを選んで、
よく観察する練習から入ることをお勧めします。
また、最初の段階では、
花束のようにたくさんの情報が入っているモチーフより、
一輪のバラをモチーフに、
花をしっかり描けるようになるための練習から始めるのが良いと思います。
構図は「紙の中央」でなくていい
みなさんは、一輪のバラを描く時、
紙のどの位置にバラを描こうとしますか?
私が初心者だった頃は、
紙の真ん中に描こうとする傾向がありました。
なぜなら、バラが絵の主役だからです。
主役を真ん中に置く構図を
「日の丸構図」と言います。
これは、主役がとても目立つ構図です。
しかし、ここで忘れていけないのは、
バラが主役ならば
脇役の存在があると言うことです。
では、脇役は何になるのでしょうか?
そうですね、この場合は2つの脇役があります。
1つは、「白い紙」です。
1つは、「葉っぱ」です。
主役であるバラを、
紙の真ん中に置きすぎると、
絵の中に 逃げ場のない圧迫感 が生まれてしまいます。
その圧迫感を解消するためには、
バラの花が向いている方向に、
広めの余白を作ってあげるのが効果的です。

花をほんの少しだけ片方にずらし、
空間の息苦しさを取り除いてください。
そうすると、
- 余白が息抜きクッションになる
- 絵の中に柔らかな動きが見える
- 花が「呼吸」して見える
などの効果が現れ出します。
余白は、何も描かない場所ではなく、
「主役を引き立てる静かな空間」
立派な脇役なのです。


葉っぱで茎周りの空間を埋めることで、
絵全体の構図が安定します。(三角形構図や対比の構図など)
鉛筆は「描きこむため」ではなく「迷わないため」

下描きに使う鉛筆は、
私は握力がないので主にBを使用しています。
Bは、描き味が滑らかで扱いやすく、
水彩紙に芯の粉が乗りやすい利点があります。
皆さんには、
HB~B(HBがベスト)をおすすめします。
硬すぎる鉛筆(H系)は線が残りやすく、
柔らかすぎる鉛筆(2B以上)は汚れやすいからです。
水彩の鉛筆による下描き線は、
色彩より強い主張があってはいけません。
そのため、強く濃く描かないようにします。
「ここに花がある」(薄い輪郭線・面の境界線)
「この辺に中心がある」(当たり線)
そうした 目印を置くための線 にします。

迷わない下描きの基本手順

ここからは、実際に手を動かしながら進める下描きの核心部分です。
紙と鉛筆を用意して、一緒に描いてみましょう。
この章では、
全体の構図については解説しますが、
花の下描きに集中するため、
茎や葉は「支え」として簡略化して扱います。
詳しい描き込みは、着彩編で改めて触れていきます。
手元に実物のバラがない方は、
Unsplash掲載の
Julie Blake Edisonさんが撮影したピンクのバラ(前章に表示)、
Usha Kiranさんが撮影した赤いバラ(ここに表示)、
Allec Gomesさんが撮影したピンクのバラ(次回予告に表示)などを参考にして、
花びらの下描きに取り組んでみましょう。

バラの下描きで大切なのは、
「細かく描くこと」ではありません。
①花びら全体を大まかに丸で捉える。
②蕾の先端の中心部分の位置を決める。
この章では、主にこの二つの手順や考え方を解説します。
これを意識して描くようにすると、
下描きは楽な気持ちで取り組めると思います。
まずは「丸」で花全体をつかむ
下描きの一手目は、
花びらのかたまりの位置と、
花枝(=花茎)が伸びてくる一本線を描くことから始まります。
まずは、
画面の中で バラ全体の位置と向き を決めましょう。
決め方は2通りあります。
①長方形で位置決め(バラ全体の位置)
②三分割の構図で位置決め(花の位置)
長方形でバラ全体の位置を決める

水彩紙の中にどのようにバラ全体を収めるのか、
バラの花の「上下左右の幅の位置」と、
バラ全体の「上下左右の幅の位置」を、
「長方形で薄く描く」と言うことです。
初心者は、
全体を収める長方形を一つ描ければ上出来です。
イメージ図では、長方形の線を濃く描いていますが、
慣れてきたら薄く当たりをつける程度で構いません。
長方形が描けたら、その線を目安に、
花全体が収まる 丸や楕円 を描きます。
葉っぱがある場合は、
花の下にある葉っぱの位置も決め、楕円で描きます。
葉っぱは3枚組か5枚組です。
※この段階では、正確な枚数でなくても構いません。
三分割の構図で主役(花)の位置を決める

最初に、画面を三分割します。
次に、交点に主役のバラを丸く描きます。
コップの形をイメージして中心を描き、
周りを楕円で囲むように描くといいですね。
あとは、
バラの丸の中心から花枝を1本引いて、
葉っぱの位置を決めたら
楕円で葉っぱも描いておきます。
この段階では、
花びらを詳細に描く必要はありません。
ここで描いた丸は、
「ここに花がある」という 範囲を示すための目安です。
正確できれいな下描きでなくとも構いません。
大きさと位置だけが分かれば十分です。
花びら一枚一枚を描きたくなる気持ちは、
ここではぐっと抑えてください。
中心を決めて、渦の流れを感じ取る
次に、
バラの花の中心を確認します。
花の丸に伸びてきている茎を手がかりにします。
中心は、
茎の延長線上にある「点ひとつ」で十分です。
そこから「4」の数字を書きます。

そして、
「4」の数字を起点に
小さな三角形をつなぐように線を入れてみてください。


すると、
花びらが渦を巻くような 流れ が見えてきます。
もし描いていて
「中心がズレている」と感じたら、
無理に消さず、
外側の丸と茎の位置を修正すればOKです。
水彩画では、
後から色で自然に整理されていきます。

次は花枝と接する下部の丸みを描き加えます。

下描きは、形の流れを探すための工程です。
大体できたら良いだろう…、
くらいの気持ちで進めましょう。
この描き方を「基礎」として、
細部を丁寧に観察し、描き込んでいく必要があります。
クロッキー帳やスケッチブックで下描きを繰り返し、
それをトレースして水彩紙に写す、
という工程が必要になります。
外側の花びらは「形」より「配置」
外側の花びらは、花の外周を、
少し角のある形で、
ざっくり囲むだけで十分です。

とりあえず3枚にします。

一枚一枚の区切りは明確にせずとも、
軽くあたり線を入れておけばいいでしょう。
花びらは、
正確な形よりも
配置と全体のリズム を優先します。

花の外周が見るからに歪んでいるような
大きな破綻がなければ、
下描きとしては合格です。
下描きで全てを正確に決めてしまうと、
その後はただの塗り絵になってしまいます。
水彩画では、
色がにじみ、
偶然が入り込む余地があるからこそ、
表現が豊かになります。
今はまず、水彩絵の具の特性を活かす、
「楽しんで描ける方法」を身につけていきましょう。
気負わず、
ほどほどなところで
次の工程へ進むのがいいですね。
※解説画像の鉛筆は見えやすいようにかなり濃い目に描いています。
実際はもっと薄く薄く描いていきましょう。
最後に、花びらの角に丸みをつけて、
少々外側の数を増やしてボリュームをつけてみましょう。


※この下描きをもとにした着彩の進め方は、次回の記事で詳しく解説します。
下描きでよくある失敗と、その立て直し方

ここまで読み進めて
「やってみたけれど、なんだかうまくいかない」
と感じた方もいるかもしれません。
ですが安心してください。
バラの下描きで起きる失敗は、
ほとんどが共通しています。
そして、その多くは
描き直さなくても修正可能です。
ここでは、
初心者の方が特につまずきやすい
代表的な失敗と、その考え方を整理しましょう。
花びらを最初から描き込みすぎてしまう

バラを描こうとすると、
仕方のないことですが、
どうしても 花びら一枚一枚 に目が向いてしまいます。
しかし、
最初から細かく描き込んでしまうと、
- 全体のバランスが崩れがちになる
- 修正ができなくなってしまう
- 描いているうちに頭が混乱する
といった状態に陥りやすくなります。
もし途中で
「こんなに描き込んだけど大丈夫かなぁ…」と感じたら、
一度 花びらの線から意識を離し、
- 花全体の丸 はどうか?
- 中心の位置 はどうか?
- 外周のリズムはどうか?
だけを見直してチェックしてください。
細部は、
後からいくらでも足せます。
また、余分な線は、
練り消しゴムで優しく消しておきましょう。
鉛筆の芯が鉛筆の持ち手とこすれて、紙を黒くしてしまうことがあります。
自分がもしそのタイプだと思う人は、
利き手の下にティッシュ(または白い紙)などを挟んで描くようにしてください。
それと、強く描いて濃くしすぎないように注意しましょう。
中心がズレて、形が歪んで見える
「なんとなく歪んで見えるなぁ…」
その原因の多くは、
花の中心位置または茎の位置にあります。
① 花びらの外周の両端を二分割したところに中心があるか?
② 茎がしっかりと花を支えているか?

この場合、
全てを消して修正するのはもったいないです。
- 新しい中心点をうっすら描き足す
- 花が安定する位置に茎を描き直す
それだけで、
驚くほど落ち着いて見えることがあります。
水彩では、
線は最終的に色に溶けていきます。
下描きは何度でもやり直せる工程
だと考えてください。
下描きを完璧にしようとして疲れてしまう

「これで上手くいっているだろうか」
「もっと整えた方がいいのでは…」
そんな気持ちが強くなりすぎると、
下描きの段階で
疲れてしまうことがあります。
ですが、
水彩画では
下描きが完璧である必要はありません。
むしろ、
輪郭線の切れた箇所や余白がある方が、
- 偶然が生み出す色のにじみ
- その人らしい筆のタッチ
が生まれやすくなります。
下描きは、
色をのせるための道しるべです。
「下描きはこれくらいにしとけば大丈夫かな?」
そう感じたら、
次の工程へ進んでも大丈夫です。

次の記事では、 いよいよ 水彩ならではの色の置き方 に進みます。
下描きで作った余白を活かしながら、
バラに命を吹き込んでいきましょう。
■次回の楽しみ|下描きができたら、いよいよ色へ

今回の記事では、
水彩でバラを描くための
下描きの考え方と手順 を
一通り確認できたのではないでしょうか。
下描きは、
迷わず色を置くための、静かな準備。
そのことが、少しでも伝わっていれば嬉しく思います。
「なんとなく形が見えてる」
「これなら色を塗っても大丈夫かな…」
下描きの段階では、
そう感じていれば、十分です。
完璧である必要はありません。
下描きは、7割できていれば合格 です。
次の工程は、いよいよ、
この下描きの上に 色を置いていく工程 です。
・どこから色を置くと失敗しにくいのか?
・にじみや、ぼかしをどう受け止めればいいのか?
・透明水彩らしいやわらかさを出すための順番は?
そんな疑問に、
初心者の方でも不安にならない進め方
でお答えしていきます。
下描きの線を眺めながら、
「どんな色にしようかなぁ」
まずはそんな時間を楽しんでみてください。
また、時間をおいて下描きを見返し、
改善点が見つかったら手直ししてください。
絵は、描いていない時間にも育っていますからね。
では、引き続き、
バラに色を入れていくお話でお会い致しましょう。

その他にも、アクリル画や油彩画、漫画、イラスト、切り絵、デッサンなど、美術全般の指導書としてもやさしくていねいに学べるHPですぴー。
ぜひ別の記事でも楽しく学んでいただければと思いますぴー。















