人物画を描いていると、
「目や鼻は描けているのに顔が似ない」
「正面は描けても横顔になると崩れる」
「どこがおかしいのか、自分でもわからない」
そんな悩みにぶつかることがあります。
実は、多くの初心者が苦労する原因は、
才能やセンスではありません。
顔を「目・鼻・口」というパーツで見てしまい、
顔全体の比率やパーツ同士のつながりを
見落としていることが大きな原因です。
こんにちは。画家のマキノ ロランです。
私は、透明水彩初心者のために、
水彩画の魅力を伝える連載を続けています。
この記事では、
- 顔の向きを決める正中線
- 大人と子供の顔の比率
- 正面顔と横顔の考え方
- 目、鼻、口、耳のつながり
- 顔を正しく観察する練習方法
を図解とともに分かりやすく解説します。
上手に描くことを目指す前に、
まずは「正しく見る力」を身につけていきましょう。
この「正しく見る」姿勢は、
透明水彩画の上達にもつながります!
Contents
顔の描き方、基本のキ

人物の顔を描くとき、
多くの初心者は最初に目を描こうとします。
目には吸い込まれるような魅力があります。
私も顔の輪郭を描いたら、すぐさま目を描く癖があります。
しかし実際には、目よりも先に確認しなければならないものがあります。
それが、
「顔全体の比率」
です。
どれほど丁寧に目や鼻を描いても、
位置関係が崩れてしまうと、その人らしさは失われてしまいます。
反対に、
大まかな比率が合っているだけで、
細部を描き込んでいなくても「人らしい顔」に見えることがあります。
まずは顔をパーツの集まりとしてではなく、
「顔はひとつの立体」として捉えることから始めましょう。
この章では、
- 顔の向きを決める正中線
- 大人と子供の比率の違い
- 正面顔と横顔の考え方
といった「顔の地図」を学んでいきます。
正中線の魔法|顔の向きを決める一本の線
顔が似ない原因の一つは、
目や鼻そのものではなく、
顔の向きが定まっていないことです。
そこで役立つのが「正中線」です。
正中線とは、
額の中央から鼻先、顎へと続く顔の中心線のことです。
人物が正面を向いているときは真っ直ぐですが、
横を向けば曲がって見え、
斜めを向けば左右どちらかへ移動します。

目や鼻を描く前にこの一本の線を引くだけで、
顔全体の方向が安定し、
パーツの位置関係も崩れにくくなります。
初心者ほど、目や鼻から描き始めたくなります。
しかし、
まずは正中線を引いて顔の向きを決めることで、
その後のパーツ配置がぐっと楽になります。
以下に、初心者とくに
小学生~高校生でもわかるように解説画像を作りました。
参考にしてください。

正面顔の比率|大人と子供は何が違うのか
顔を観察すると、
大人も子供も同じようなパーツでできています。
しかし私たちは一目見ただけで、
その違いを感じ取っています。
大きな理由は「比率」にあります。
一般的に、
目の高さは頭部のほぼ中央にあります。
初めて知る人は驚きますが、
髪の生え際から顎までを測ると、
目は思った以上に低い位置にあります。
ただし、顔の大きさに比べて
子供の目は大きく見えます。
それが可愛らしさの一因です。
また、
眉から鼻先、
鼻先から顎さきまでは、
おおよそ同じ長さの関係になっています。
子供は大人に比べて、
鼻や顎の骨の成長がまだ途中段階です。
そのため、目の位置はほぼ同じでも、
額や後頭部の占める割合が大きく見えます。

横顔の比率|見落とされる頭蓋骨の大きさ
横顔が苦手な人は非常に多いです。
その理由の一つが、
顔ばかり見て頭を見ていないことです。
初心者は、
目・鼻・口に意識が集中しすぎて、
後頭部の大きさを小さく描いてしまう傾向があります。
しかし実際には、
顔よりも頭蓋骨の占める割合はかなり大きいのです。
また、
耳の位置も想像以上に後ろにあります。
横顔を描くときは、
まず頭蓋骨全体の大きな形を捉え、
その後で顔のパーツを配置していくと安定しやすくなります。


顔のパーツはどうつながっているのか
顔が似ない原因は、
目や鼻を描けないからではありません。
実は、多くの場合は
「つながり」を見落としていることが原因です。
初心者の頃は、
目なら目、鼻なら鼻というように、
一つひとつのパーツを別々に描こうとしがちです。
しかし実際の顔は、
目だけ、鼻だけで存在しているわけではありません。
眉間は鼻へ続き、
鼻は頬へ続き、
頬は口元へ続き、
耳は顎や首へ続いています。
実は江戸時代の浮世絵師・歌川国芳も、
「部分が集まって全体を作る」という発想を作品に取り入れていました。

人物画を描く上で大切なのは、
パーツの描き方を覚えることも大切ですが、
それ以上に、
パーツ同士のつながりを観察することが重要です。
ここでは、顔を「部分」ではなく
「流れ」として見る練習をしてみましょう。
眉間から鼻へ|顔の中心を流れる一本の道
初心者の絵を見ると、
「眉毛を描く」
↓
「目を描く」
↓
「鼻を描く」
というように、パーツに集中して描く傾向があります。
一つ一つを一生懸命描いていて素晴らしいのですが、
何かがもの足りない感じになっていることがあります。
それはなぜか。
眉間から鼻筋までのつながりを見落としているからだと言えます。
特に横顔や斜め顔では、
この流れを捉えられるかどうかで立体感が大きく変わります。
鏡を見ながら、自分の眉間を指でなぞり、
そのまま鼻先までゆっくり触れてみてください。
そこには急な段差はなく、
なだらかな起伏が続いているはずです。
人物画では、この「面の流れ」を描く意識が大切です。


頬から鼻、口へ|柔らかな面の変化を見る
鼻だけを描いているつもりでも、
実際には頬との境界や口元との関係によって印象が決まっています。
例えば小鼻。
初心者は輪郭線で描きたくなりますが、
本当は頬から少しずつ盛り上がって現れてきます。
つまり、頬に影を入れながら小鼻を浮き上がらせるのです。

また、人中から上唇にかけての部分も重要です。
口は単独で存在しているのではなく、
鼻の下から続く面の一部として存在しています。

人物が似ないと感じるときは、
目や鼻を描き直す前に、
頬から口元までの流れを見直してみましょう。
意外なほど印象が変わります。
耳から顎、首へ|顔の外側の流れを見る
人物らしさを作る上で重要なのが、顔の外側のラインです。
耳は単なる飾りではありません。
耳の位置が決まることで、
顎の角度や首の向きが見えてきます。
また、横顔では、
耳→顎→首
という流れを観察すると、
人物の骨格が理解しやすくなります。
耳から後頭部へ続くラインも重要です。
顔だけではなく、
頭全体の形を意識することで、
人物らしい立体感が生まれます。

正面からは、鏡を見ながら、
耳の下から顎へ、
顎から首へ、
どのように線が流れているかを観察してみてください。

顔の輪郭は一本の線ではなく、
いくつもの面が連続してできています。
その流れが見えてくると、
人物画は急に立体的になります。
顔は「目・鼻・口・耳」という
部品の集まりではありません。
面と面が連続してつながることで、
一つの立体として成り立っています。
顔が似ない本当の理由|観察する目を鍛えよう

顔の地図を覚え、
パーツ同士のつながりも理解した。
それなのに、「まだ顔が似ない」
はてさて、なぜなのでしょう?
実は、「見方」に原因があります。
実は、ここに人物画上達の大きなヒントがあります。
人間の脳は、
目の前にある形をそのまま見ているつもりでも、
実際には
「目」「鼻」「口」といった記号として認識してしまうのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチは
全体の雰囲気を捉えることを重視し、
ミケランジェロは
骨や筋肉の構造を徹底的に理解しました。
巨匠たちは「見えているもの」を
そのまま描いていたのではなく、
正しく観察する方法を身につけていたのです。
「まだ顔が似ない」という人のために、
ここでは、初心者でも取り組みやすい
「特別の観察トレーニング」を紹介します。
逆さま模写|脳の「記号化」を止める

人間の脳は、顔を見ると
「これは目だ」「これは鼻だ」
と勝手に判断します。
その結果、
本当に見えている形ではなく、
脳の中にある「目のマーク」を描いてしまうのです。
そこで有効なのが逆さま模写です。
写真や線画を上下逆にして模写すると、
脳はそれを顔として認識できなくなります。
すると、
線の長さや角度を正確に観察できるようになってきます。
ネガスペース|背景や隙間の形を描いてみよう
そこでおすすめなのが、
「人物ではなく背景・隙間を見る」
練習です。
私たちは普段、
「目」「鼻」「口」
という名前のあるパーツばかり見ています。
しかし、
あえて名前のない隙間の形に注目すると、
脳は記号で判断できなくなり、
見たままの角度や長さを観察し始めます。
ここでは、絵の具を使った練習を紹介しますが、
鉛筆でしっかりと塗って練習しても構いません。

例えば、上の図のように、
横顔のおでこ~鼻先~唇までの背景。
これも立派なネガスペースです。
人物以外の背景空間に目を集中し、
外側を塗って人物を浮き上がらせる練習をしてみましょう。

前髪の後ろに隠れたおでこも、
名前のない形として観察できます。

小鼻と口元、頬の間にも、
小さな三角形の空間が存在しています。
実際の人物画では、
こうした「顔そのもの」ではなく
「顔の周囲にできる形」を観察することで、
驚くほど正確に形を捉えられるようになります。
不思議なことに、
隙間の形を正しく描けるようになると、
顔全体のバランスも自然と整っていきます。
まずは鏡の前で、
前髪と額の間にできる隙間や、
横顔の輪郭の外側に見える空間の形を探してみましょう。
それだけでも、
観察する目は大きく変わります。
明暗のパズル|顔を線ではなく面で見る

どうしても人物画が不慣れなうちは、
顔を輪郭線で捉えようとします。
しかし実際の顔には、線は存在しません。
私たちが見ているのは、光と影だからです。
写真をよく見ると、
鼻の輪郭も実際には線ではなく、
明るい面と暗い面のぼやけた境界として見えています。
私たちの脳が、
その境界を「線」として認識しているだけなのです。
そこで、
線を描くのをやめて、
明るい部分と暗い部分だけを塗り分ける練習をしてみましょう。
顔は複雑なパーツの集まりではなく、
光が当たる面と影になる面の組み合わせでできています。
この練習を続けると、
顔の立体感が自然に理解できるようになります。

【このセクションのキーワード】
①「脳の記号化を止めて、形を見る」
②「背景・隙間のネガスペースを見る」
③「光と影の明暗のパズルを見る」
レオナルド・ダ・ヴィンチもまた、
目の前のものを注意深く観察することを何より大切にしていました。
この3つの観察法は、
人物を見る「観察力」を育てるための
良いトレーニングになりますので、
ぜひ試してみてください。
正面の顔を描く|ゴールデンプロポーション
このセクションでは、
「大きな卵形」から始めて、
比率(ゴールデンプロポーション)に合わせてアタリの線を分割していき、
美しいバランスで描き進めます。
紙とペンを用意して、以下のステップ順に描き進めてみてください。
初心者必見!正面の「顔」を描く手順

顔の輪郭から始めて、
正中線・目・鼻・口・耳・眉・髪の毛へと順番に描き進めることで、
バランスの良い正面顔を描きやすくなります。
Step 1:顔の輪郭(卵形)を描く
まず、画面の中心に綺麗な卵形(上ふっくら、下すぼまり)を1つ描きます。
- これが頭の最上部(頭頂)からあご先までのベースになります。
Step 2:中心線(十字)を引く
卵形を正確に縦半分、横半分にする十字の線を引きます。
- 縦の中心線:鼻や口のセンターラインになります。
- 横の中心線:この線が「目の位置」になります(※髪の毛のボリュームを除いた、頭頂からあご先までのちょうど真ん中が目の高さです)。
Step 3:縦の比率を3等分する(生え際・眉・鼻)
卵形の上部(頭頂から少し下がった「髪の生え際」)から「あご先」までの距離を、等間隔で3等分する線を引きます。
- 上から1つ目の線:「眉」の位置。
- 上から2つ目の線:「鼻の下」の位置。
- これで「生え際~眉」「眉~鼻下」「鼻下~あご先」を「1:1:1」にします。
Step 4:目を5等分の幅で描く
Step 2で引いた「横の中心線」の上に目を描きます。卵形の横幅を綺麗に5等分します。
Step 5:両端の1マスを空け、2マス目と4マス目に目を描きます。
- これで「目の横幅」と「目と目の間」が「1:1」になります。
- 「目」は縦横比を「1:3」に近づけます。
- 薄く「眉毛」のあたりをつけておきます。
Step 6:鼻を描く
Step 3で決めた「鼻の下」の線の上に小鼻(鼻の横幅)を描きます。
- 左右の目頭から、真下にまっすぐ下ろした線の幅に収まるように鼻を描きます。
Step 7:口を描く
「鼻の下」から「あご先」のスペースを、さらに上から1:2に分ける位置に唇の真ん中の線を引きます。
- 口の横幅は、左右の黒目の内側から、真下に下ろした線の幅に合わせます。
Step 8:耳を描く
- 耳:「眉の高さ」から「鼻の下の高さ」の間に収まるように、輪郭の外側に描きます。
Step 9:眉を描く
- Step 4で描いた目の上の位置に「眉」を描きます。
- 眉頭は「口角と目頭を結んだ延長線上」から描き始めます。
- 眉尻は「小鼻の外側と目尻を結んだ延長線上」まで伸ばします。
Step 10:髪の毛を描く
- 生え際の線から上に、髪の毛のボリューム(厚み)を少し足します。
- あたりの補助線を消し、正面のゴールデンプロポーション顔を完成させます。
初心者必見!正面の「目」を描く手順

Step 1:目の基本枠は「縦 1 : 横 3」
- 目を描く場所に「縦の長さが1、横の長さが3」の横長の長方形を描きます(例:縦1cmなら、横3cm)。
Step 2:白目と黒目の比率は「1 : 2 : 1」
長方形を横に「1:2:1」の割合で3つのエリアに分割します。
- 目頭側の白目:1
- 中央の黒目(虹彩):2
- 目尻側の白目:1
- 黒目は真ん丸のまま描くと驚いた目になるため、
上側が1~2割ほど上まぶたに隠れるように配置するのが黄金比です。
Step 3:まぶたのカーブ(最高点の比率)
目の輪郭(まぶたの曲線)を描くときは、
山の頂点をずらすとリアルになります。
- 上まぶた:目頭から数えて「1:2」(全体の1/3)進んだ、黒目の外側の端の上あたりが最も高くなるように緩やかな山を描きます。
- 下まぶた:逆に目尻側から数えて「1:2」(全体の1/3)進んだ、黒目の内側の端の下あたりが最も低くなるように、なだらかな谷を描きます。
Step 4:目頭と目尻の高さの比率
- 目頭と目尻の高さは「ほぼ水平」が基準です。
- 少しだけ大人っぽく、またはクールに見せたい場合は、目尻を「白目の縦幅の1/4~1/3」ほど上に引き上げる(わずかにつり目にする)と、現代的で魅力的な目元になります。
Step 5:さらに美しく見せる「涙袋」の比率
目の下に「涙袋」を描く場合は、
目の縦幅(1)に対して、
涙袋の縦幅が「0.5~0.7」に収まるように細い影を入れます。
これを超えると不自然に大きく見えてしまうので注意してください。
よくある質問(FAQ)|人物の顔の描き方Q&A
まとめ|顔は「パーツ」ではなく「つながり」で見る
私たちは、人物の顔を描くとき、
目や鼻、口といったパーツの描き方ばかりに意識が向きがちです。
しかし実際には、
顔の向きを決める正中線、
目・鼻・口の位置関係、
そして眉間から鼻、頬から口元へと続く面の流れを理解することで、
顔はぐっと描きやすくなります。
また、逆さま模写やネガスペース、
明暗のパズルといった観察トレーニングは、
「見たつもり」を「本当に見る力」へ変えてくれます。
まずは鏡の中の自分や身近な家族の顔を観察しながら、
一枚のスケッチを描いてみてください。
描くたびに新しい発見があり、
観察する楽しさが少しずつ深まっていきます。
描くうちに、
モデルの内から溢れるエネルギーが
きっと皆さんの絵に現れてくると思います。
人物画の上達は、観察する楽しさから始まります。
あわせて読みたい
人物画は顔だけでなく、
手や全身の観察にも共通する考え方があります。
興味のある方は、こちらの記事も参考にしてみてください。


















ぜひ別の記事でも楽しく学んでいただければと思いますぴー。