透明水彩の大きな魅力のひとつが、
紙の上で色がふわっと広がる「にじみ」です。
前回の基本編では、
にじみを成功させるために大切な
「紙のツヤ」「水分量」「絵の具の濃さ」について解説しました。
💁🏻♀️ にじみの基本となる紙のツヤ・水分量・バックランについては、先にこちらの記事で詳しく解説しています。
👉【透明水彩】にじみの基本|初心者が最初に覚えたい水加減と紙選び

類似色の虹のように、色が自然に出会う楽しさを味わってみましょう。
こんにちは、画家のマキノロランです。
今回は、その応用編です。
テーマは、
類似色2色で作る、濁りにくいにじみです。
「にじみは楽しいけれど、2色を使うと濁ってしまいそう」
「どの色を組み合わせたらいいのかわからない」
「きれいに混ざるはずなのに、紙の上で暗くなってしまう」
透明水彩を始めたばかりの方には、このような悩みがよくあります。
そこでおすすめしたいのが、
色相環でとなり合う「類似色(るいじしょく)」です。
類似色は、色同士の相性がよく、
初心者でも濁りにくい組み合わせです。
たった2色でも、紙の上で自然な中間色が生まれ、
やわらかく美しいにじみを楽しむことができます。
この記事では、
青×緑、黄色×オレンジ、ピンク×紫などの
わかりやすい類似色を使いながら、
初心者でも失敗しにくい2色にじみの手順を紹介します。
今回も、前回の「牧野指標」である
牛乳の濃さという言葉を使いながら、
絵の具の濃さをできるだけ感覚的に説明していきます。
難しい理論よりも、まずは紙の上で色が出会う時間を楽しんでみましょう。
Contents
なぜ濁りにくい?「類似色」がにじみ初心者に強い理由

透明水彩で2色をにじませるときに、
初心者が一番心配するのは
「色が濁ること」ではないでしょうか。
「せっかくきれいな黄色と青を使っているのに、紙の上で混ざったら灰色っぽくなった」
「鮮やかな赤と緑を使ったはずなのに、乾いたら暗く沈んで見えた」
私が過去に経験したこうした失敗は、
混ざると色味が中和されやすい「色の組み合わせ」が原因でした。
そこで、水加減に慣れていない初心者に
最初におすすめしたいのが「類似色」です。
色が濁る心配が少なくなると、
そのぶん「紙のツヤ」や「水分量」のコントロールだけに集中できるようになります。

類似色は「色相環でとなり合う色」だから濁りにくい
では、なぜ類似色は濁りにくいのでしょうか。
その秘密は「色相環」にあります。

色相環とは、
赤・橙・黄・緑・青・紫などの色を、
虹のようにぐるりと輪の形に並べた図のことです。
類似色(色相環でとなり合う色)とは?
青のとなりの「緑」、
黄色のとなりの「オレンジ」など、
距離が近い色同士を指します。
もともとの性質が近いため、
紙の上で混ざり合ってもケンカをせず、
自然な「3つ目の中間色」が生まれます。
🐥 中間色の例…
・青と緑なら青緑。
・黄色とオレンジなら、暖かい黄みのオレンジ。
・ピンクと紫なら、やわらかな赤紫。
このように、類似色は色同士がなじみやすいのが特徴です。
補色(色相環で向かい合う色)とは?
赤と「緑」、
黄色と「紫」、
青と「オレンジ」などが補色の関係です。
となりに並べると
お互いを強く引き立て合う、美しい組み合わせです。
赤の隣に緑を置くと、
赤も緑もいっそう鮮やかに感じられます。
ただし、透明水彩のにじみでは、
補色同士が水の上で混ざり合うことがあります。
このとき、
絵の具として混ざると色味が中和され、
灰色や茶色に近づきやすくなります。
そのため、
初心者が最初から補色同士をにじませると、
思ったより色が暗くなり、
「濁ってしまった」と感じるかもしれません。

きれいな中間色が生まれやすい類似色から始めて、
成功体験を積み重ねていきましょう。
初心者でも迷わない!おすすめの類似色コンビ3選
にじみの練習をするときは、
よくばらずに「2色だけ」で試してみましょう。
3色以上は、色の管理が急に難しくなります。
3色以上はどの色がどう混ざったのか、
失敗の原因がどこにあるのか、
それが分からなくなってしまいます。
次にあげるのは、私の経験上、
にじみが失敗しにくい3つのコンビです。
直感で好きな組み合わせを1つ選んで試してみてください。
- 🎨 1. 黄色 × オレンジ(あたたかみ・元気)
- 似合うモチーフ:
光、夕日、ひまわり、みずみずしい果物、紅葉 - 初心者に推す理由:
画面が暗くなりにくく、見ているだけで元気が出るにじみになります。
もっとも「きれいにできた!」という成功体験を得やすいコンビです。
- 似合うモチーフ:
- 🎨 2. 青 × 緑(さわやか・清涼感)
- 似合うモチーフ:
水辺、木々、静かな湖、雨上がりの葉、朝の空気 - 初心者に推す理由:
透明水彩らしい、澄んだ清涼感を出しやすい王道の組み合わせです。
にじみの広がり方も美しく観察できます。
- 似合うモチーフ:
- 🎨 3. ピンク系の赤 × 紫(やわらか・幻想的)
- 似合うモチーフ:
あじさい、夕焼け、夜明け、夢の中のような背景 - 初心者に推す理由:
少し大人っぽく、ドラマチックで幻想的な雰囲気を作りたいときにぴったりです。
ポストカードやしおりの背景に使うと、それだけでアート作品のように仕上がります。
- 似合うモチーフ:
| 雰囲気 | 色の組み合わせ | 向いている表現 | 初心者におすすめの理由 |
|---|---|---|---|
| あたたかい | 黄色 × オレンジ | 夕日、花、果物 | 画面が暗くなりにくく、最初の成功体験を得やすい |
| さわやか | 青 × 緑 | 水辺、葉、朝の空気 | 透明水彩らしい清涼感が出しやすく、色の広がりを観察しやすい |
| 幻想的 | ピンク系の赤 × 紫 | 花、夜明け、夢の背景 | 強い赤よりもやわらかく、明るい赤紫のにじみを作りやすい |
| 静か | 青 × 青紫 | 夜空、湖、影 | 色の距離が近いため、落ち着いたグラデーションを作りやすい |
| 明るい | 黄緑 × 緑 | 若葉、春、草原 | 自然のモチーフに応用しやすく、葉や草の表現にもつながる |
ただし、透明水彩の実践では、強い赤をそのまま使うよりも、ピンク系の赤を使った方が、やわらかく明るいにじみになりやすいです。
そのため、この記事では初心者が試しやすい例として、
「ピンク系の赤 × 紫」
という組み合わせを紹介します。
色相環の考え方としては「赤と紫のあいだに赤紫ができる」と理解し、実際の制作では、手持ちの絵の具に合わせてピンク寄りの赤を使っても大丈夫です。
手持ちのホルベイン透明水彩24色セットを使い、
赤はオペラとクリムソンレーキを混ぜて作っています。
色相環は、絶対にこれだという絵の具に縛られる必要はありません。
自分の手持ちの色で「となり合う色」と「反対側の色」の関係を見つけていきましょう。

この中から選んだ「仲良しの2色」を並べることからスタートしてみましょう。
※黄色×オレンジやピンク×紫のにじみは、夕焼け空や夕暮れの海にも応用できます。夕暮れの海の描き方はこちらの記事で詳しく紹介しています。
👉透明水彩で夕暮れの海を描く方法|空・雲・光を海に映す描き方
実践前にチェック!にじみを成功させる3つの道具
類似色を選ぶことで、
色の濁りはかなり防ぎやすくなります。
ただし、にじみの美しさを最終的に決めるのは、
水と絵の具が紙の上でゆっくりと流れる「時間」と「環境」です。
どれほど相性の良い2色を選んでも、
道具がにじみに向いていなければ、
すぐに乾いて境目がくっきり残ったり、
触りすぎて濁ったりしてしまいます。
前回の基本編で学んだ
「紙のツヤ」や「水分量」をしっかり活かすために、
今回は2色にじみを成功させる
「紙・筆・絵の具」の3つの条件を、シンプルに確認していきましょう。
紙|理想は300g前後の水彩紙

透明水彩のにじみは、水をたっぷり使います。
そのため、紙が波打たない
保水力の高い300g前後の水彩紙が理想です。
紙に水分が残ることで、
絵の具がゆっくり混ざり合い、美しい中間色が生まれます。
この「絵の具が動く時間」が、にじみではとても大切です。
紙がすぐに乾いてしまうと、
1色目と2色目が出会う前に、境目が止まってしまいます。
ヴィフアール242gのような水彩紙でも練習はできます。
ただし、薄めの水彩紙を使う場合は、
波打ちが気になるときだけ水張りをすると安心です。
大切なのは、
普通の画用紙よりも、水を受け止められる紙を選ぶことです。
練習では、余った水彩紙の余白を使ってやるので十分です。
回数を重ね、失敗と成功の体験をたくさん積んだほうがいいと私は考えています。
しばらく放置するとクルクル波打った紙も伸びてきます。
乾いてないか確認してもう一度両面を濡らします。
その後テーブルや板に貼り付けます。
かなりの確率でピタッと張り付いた状態で作業が進められます。

水彩紙の種類や、初心者に使いやすい紙の選び方は、こちらの記事で詳しく解説しています。👇
🥳水彩画初心者の悩み解決!【水彩紙の選び方】3つの視点で優しく解説
筆|水をたっぷり含める「中~大の丸筆」

透明水彩のにじみ技法では、
水と絵の具をたっぷり、かつ少ない手数で運べる
「中~大の丸筆(8号~12号程度)」が最適です。
筆選びで意識したいポイントは、次の2つです。
① 筆で紙をこすらない
小さな筆で何度も往復すると、
紙の表面が傷みやすく、
水の量にムラが出てしまいます。
穂先の豊かな筆を使い、
できるだけ少ない筆数でやさしく水を広げます。
② 絵の具は置いて、あとは待つ
絵の具をのせるときは、
筆先を紙にそっと触れさせるだけにする。
にじみは水に任せます。
無理にこすり混ぜようとすると、にじみの柔らかさが消えて色が濁る原因になります。
「筆で混ぜるのではなく、水が混ぜてくれるのを待つ」という意識が大切です。

筆選びに迷う方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。👇
🥳初心者向け水彩筆の選び方|おすすめ筆・本数・特徴を徹底解説
絵の具|最初は透明感のある2色を選ぶ
最後の道具チェックは「絵の具」です。
みなさんが選んだお好みの類似色2色の
「透明感」に注目してみましょう。
透明水彩は、
紙の白さを光のように透かすことで、
澄んだにじみを生み出します。
そのため、最初の練習では
以下の性質を知って選ぶと、濁る失敗をさらに防げます。
- 透明感のある色(Transparent)
紙の白さを遮りにくいため、にじんだ部分にも光が残り、明るく澄んだグラデーションになりやすい色です。
最初の練習におすすめです。 - 不透明な色(Opaque)
紙の白さをおおいやすいため、力強い表現ができます。
その一方で、にじみに使うと少し重たい印象になることがあります。 - 便利色(複数の顔料で作られた色)
1つのチューブの中に最初から複数の顔料が混ざっている絵の具です。
そのまま使うには便利ですが、さらに別の色と混ざると、思ったより落ち着いた色になることがあります。
チューブの裏に「PIGMENT」とあるので、そこが2個以上なら複数顔料。
「透明(Transparent)」
「半透明(Semi-transparent)」
「不透明(Opaque)」
の表示を参考にしましょう。
また、顔料番号(PY43、PB29など)も手がかりになります。
顔料番号が1つだけのものは「単一顔料」の色です。
2つ以上書かれているものは、複数の顔料を混ぜて作られた色です。
単一顔料は、混色したときの結果を予想しやすいので、初心者の練習に向いています。
複数顔料の色も便利ですが、さらに別の色と混ざると、思ったより落ち着いた色になることがあります。

不透明な色や便利色が悪いわけではありません。
落ち着いた色や、深みのある表現を作りたいときには、とても役立ちます。
ただし今回は、「まず濁らずににじみを楽しむ」ことが目的です。
迷ったときは、まず「透明」または「半透明」と表示された、
できるだけシンプルな2色を選んでみてください。

🥳 水彩画初心者の絵の具の選び方|パン・チューブ・セット比較
実践!失敗しにくい類似色2色にじみの基本5ステップ

ここからは、
実際に類似色2色を使って、にじみを作っていきます。
今回のポイントは、
準備の段取りをしっかりすること、
紙のツヤを見ること、
色を置いたら触りすぎないこと
です。
透明水彩のにじみは、筆で描き込むというより、
水と絵の具が紙の上で出会い、
ゆっくり広がっていく様子を見守る技法です。
きれいにしようとして筆で何度も触るほど、
色は濁りやすくなり、にじみのやわらかさも失われてしまいます。
反対に、最初の準備を整えて、
紙の水分がちょうどよいタイミングで色を置くと、
あとは水が自然に2色をつないでくれます。
今回は、次の5ステップで進めます。
- 先に2色をパレットで準備する
- 紙を濡らして、しっとりしたツヤを作る
- 1色目を「牛乳」の濃さで置く
- 2色目を少し濃いめに近づける
- 筆を置いて、じっと見守る

ステップ1|先に2色をパレットで「たっぷり」準備しておく
にじみを始める前に、
まずパレットの広い面で2色を準備しておきます。
これは、とても大切な段取りです。
紙を濡らしてから色を作り始めると、
その間に紙がどんどん乾いてしまいます。
紙が乾きかけてから色を置くと、
境目がくっきり残ったり、
思ったように色が広がらなかったりします。
そのため、紙を濡らす前に、
使う2色をパレットにしっかり作っておきましょう。

量は少なすぎない方がよいです。
途中で絵の具が足りなくなると、
また作り直す必要があり、その間に紙が乾いてしまいます。
小さな練習紙でも、
少し余るくらいの量を作っておくと安心です。
作り方は、青×緑で試すなら、
パレットの左に青、右に緑を作ります。
私は、ミニ絹豆腐のプラカップを2個用意して、
再利用してパレット代わりにしています。
筆も色別に2本用意できると、
色作りの途中で濁りにくくなります。
筆が1本しかない場合は、
色を変えるたびにしっかり洗い、
余分な水を軽く拭き取ってから使いましょう。


ステップ2|紙を濡らして、しっとりした「ツヤ」を作る
次は、にじませたい範囲をきれいな水で濡らす手順です。
ここでは、紙の表面が、
斜めから見たときにほんのり光る、
しっとりしたツヤの状態を作ります。
ツヤがある間は、
絵の具が水に乗って動いてくれます。
紙の表面が乾き始めると、ツヤが消えてきます。
色を置いても、にじみはあまり広がりません。
水が多すぎると、色が流れすぎたり、
後からバックランが起きやすくなったりします。

私は、適切なツヤを作るために、
最初に刷毛を使って紙に水を塗ります。
最初は、刷毛に水を含ませて、
にじませたい範囲をやさしく濡らします。
そのあと、30秒ほど待ってから、
紙を斜めから見て、ツヤの状態を確認します。
ただし、
乾く速さは紙の種類や室温によって変わるので、
時間よりも「ツヤの見え方」を優先してください。
紙のツヤは、正面から見るよりも、
少し斜めから見ると確認しやすくなります。
水たまりができている場合は、
水分を軽く拭き取った刷毛または筆で、
余分な水をそっと吸い取ります。
乾いているところがあれば、
もう一度軽く水で濡らしツヤを確認します。
キラッと光っているけれど、水が盛り上がっていない。
この状態が理想です。

水たまりになったときの対処法は、
にじみ①の基本編で詳しく解説しています。👇
👉【透明水彩】にじみの基本|初心者が最初に覚えたい水加減と紙選び
この水塗りステップは地味に見えますが、
にじみの成否を決める大事な準備です。
私は、きれいなにじみの成功と失敗は、
色を置く前の水の状態で半分決まっていると思っています。
ステップ3|1色目は「牛乳」の濃さでそっと置く

ステップ1でぴ太郎さんから質問があった絵の具の濃さを解説しますね。
紙にしっとりしたツヤができたら、1色目を置きます。
ここで使う絵の具の濃さは、
前回の基本編でも使った「牛乳の濃さ」を目安にします。
1色目は、牛乳の中でも
「さっぱりした牛乳」くらいの濃さをイメージします。
水のように薄いのではなく、色の存在感はある。
でも、ベタベタと重くはない。
そのくらいの濃さです。
ちなみに、2色目は、1色目と同じくらい、
または、少し濃いめにします。
イメージとしては「濃いめの牛乳」くらいです。
紙はすでに水で濡れています。
そのため、
パレット上で薄すぎる絵の具を使うと、
紙の上でさらに薄まり、色が弱くなってしまいます。
反対に、
濃すぎる絵の具を使うと、
にじまず、その場に重く残りやすくなります。

筆に絵の具を含ませたら、
濡らした紙の上にそっと置きます。
このとき、筆で塗り広げようとしすぎないことが大切です。
にじみでは、筆を動かして形を作るより、
置いた絵の具が水に運ばれて広がる様子を見ます。
ポン、と置く。スッ、と短く動かす。
そのくらいで十分です。

色を置いた瞬間に絵の具は、
湿っている紙の上でふわっと広がっていきます。
この広がり方を、まず観察してみましょう。
強く広がるのか。ゆっくり広がるのか。
紙の上にとどまるのか。
それを楽しみながら見てください。
練習をコツコツ重ねていけば、
水分量や絵の具の濃さの感覚が自然と身についていきます。
ステップ4|2色目は「さらに少し濃いめ」に近づける

1色目を置いたら、
紙のツヤが残っているうちに、
落ち着いて2色目を置きます。
急ぎすぎて雑に置く必要はありません。
大切なのは、紙が乾ききる前に、
2色目を1色目の近くへそっと置くことです。

ここでのポイントは、次の2つです。
- 作業がもたつかないように、2色を先に準備しておくこと
- 2色目を水っぽくしすぎないこと
もたついてしまうと、紙のツヤが消え、
2色目を置いてもなじみにくくなります。
また、1色目が広がり切ってしまい、
2色目を置く余裕が少なくなることもあります。
後から置く2色目の水分が多すぎると、
先に置いた1色目を押し戻してしまうことがあります。
その結果、カリフラワーのような模様、
つまりバックランが起きやすくなります。
もちろん、
バックラン自体は悪いものではありません。
水彩らしい面白い模様として使うこともできます。
ただ、今回まず目指したいのは、
2色がやわらかく自然に混ざるにじみです。
そのため、2色目は1色目と同じくらい、
またはほんの少し濃いめにしてにじみ具合を安定させます。
2色目を置く場所は、1色目のすぐ隣です。
ぴったり重ねるのではなく、
ほんのわずかの隙間を空けるように置いてもよいです。
ステップ2で湿らせておいた紙の上の水が、
2色を自然に出会わせてくれます。
1色目と2色目が徐々に混じり合い、
自然な中間色がじわじわと生まれてくる様子を見てみましょう。
青と緑なら、青緑のような色がじんわりと生まれます。
しっとり湿った紙の上で誕生する第3の色。
この誕生の瞬間に出会えるのが、
2色にじみの魅力だと私は思います。
ステップ5|筆を置いて、じっと見守る

色を置いたら、筆も置くのじゃ。
そして、じっと見守りましょう。
「もう少しきれいにできそうだ」
「境目をなじませてみた方が良さそうだ」
と思って、筆で触りたくなります。
透明水彩でにじみを失敗する落とし穴はここにあります。
触りすぎは、濁りの原因です。
色が混ざりすぎて、
せっかくの透明感が失われてしまいます。
にじみは、水が完成させてくれる技法です。
この段階での筆は、色を置くための道具であり、
必要な時に余分な水分を吸い取る補助役です。
色を置いた直後は、まだ結果が見えません。

数分たつと、色が少しずつ広がり、
境目がやわらかくなります。
最初は思った方向に広がらずモヤモヤするかもしれません。
片方の色だけが強く出てモヤモヤするかもしれません。
予想していない模様が出てドキッとするかもしれません。
この変化の時間こそが、
透明水彩のにじみの面白さです。

水が作る偶然の形を受け入れるのじゃ。
それが、透明水彩のにじみを楽しむ極意なのじゃ。
ここでの合言葉は、置いたら、触らないです。
筆を置いて、紙の上の静かな変化を見守りましょう。
もっと楽しくなる!にじみ模様を広げる3つの遊びアイデア

基本の2色にじみに慣れてきたら、
色の置き方や仕上げの工夫を少し変えて遊んでみましょう。
にじみの面白いところは、
正解がひとつではないことです。
同じ「青×緑」の組み合わせでも、
中心に落とすのか、紙を傾けるのか、
ラップをのせるのかによって、
まったく違う表情に変化します。
きれいなグラデーションを作るだけでなく、
水彩ならではの偶然から、花のような形、
流れるような線、結晶や岩肌のような
不思議なテクスチャ(質感)まで生まれるのが、
にじみの醍醐味です。
ここでは、初心者でも実験感覚で今すぐ試せる
「3つの遊び方」を紹介します。
まずは、はがきサイズや余った水彩紙の切れ端を使って、
ゲームのように気軽に試してみてくださいね。
真ん中に垂らす|花のように広がる水滴にじみ

まずは、紙全体(または丸く濡らした範囲)に、
1色目を薄く広げます。
そこへ、2色目を筆先に含ませて「ポトン」と落としてみましょう。
たとえば、ピンクを広げた真ん中に、
紫を1滴落とします。
すると、紫が水に乗って外側へとフワリと広がり、
まるで大輪の花が開くような美しいにじみ模様になります。

成功させるポイント
- 色を落とす場所は、最初は「真ん中に1~2箇所だけ」に絞る
- あちこちに何度も落とすと、水分が増えすぎて形が崩れやすい
- 水が多すぎると、バックラン(ギザギザ模様)の原因になることもある
- 1色目のツヤを見て、タプタプしていないか確認する

にじみとの違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてくださいね!👇」
👉 透明水彩のぼかしの描き方|グラデーションのコツと失敗しない水加減
紙を少し傾ける|色の流れを作る重力にじみ

紙の上に2つの色を置いたあと、
画板やスケッチブックを
そっと色んな角度に傾けてみてください。
すると、水が重力で下へと流れ、
絵の具も一緒に生き物のように動き出します。
この方法を使うと、
にじみはただ「広がる」だけでなく、
美しく「流れる」という全く新しい表情を見せてくれます。
これを応用すれば、
幻想的なオーロラ、風の動き、
水の流れなどを表現したいときに大活躍するテクニックです。

成功させるポイント
- 紙を立てすぎないこと:
傾きが大きすぎると、絵の具が一気に下まで流れ落ちてしまい、
コントロールができなくなります。
最初は「ほんの少し、数ミリ(数センチ)持ち上げるだけ」で十分です。 - 動いたらすぐ戻す:
色が狙った方向へ動き始めたら、
紙を水平に戻し、あとは水に任せて乾くのを待ちましょう。
まずは、紙をほんの少し傾けるだけで、
水と絵の具がどんなドラマを見せてくれるか、
ワクワクしながら観察してみましょう。
ラップをのせる|偶然のテクスチャを楽しむラップ模様

水彩画の『モダンテクニック(特殊な技法)』の1つじゃな。
これは、にじみで広げた色の上に、
クシャクシャにした家庭用ラップをのせて乾かすユニークな方法です。
まず、いつも通り紙を濡らして類似色2色をにじませます。
画面がまだ十分に濡れているうちに、
手で軽くシワを作ったラップを上からそっとかぶせましょう。
そのまま触らず、完全に乾くまでじっくり待ちます。

完全に乾いてからラップをペリペリとはがすと、
まるで結晶のような模様や、
ゴツゴツした岩肌のような不思議なテクスチャが現れます。

成功させるポイント
- 乾くまで絶対にラップを動かさないこと
- 途中で気になって触ったりズラしたりすると、模様がぐにゃりと崩れたり、色がこすれて濁ったりする
- ラップをのせたら、ドライヤーを使うか、自然乾燥でカラカラに乾くまでじっとガマンする
にじみは、何か具体的なモチーフ
(花や空など)を描くだけの技法ではありません。
色と水、そしてラップが作った「偶然の模様そのもの」が、
それだけでひとつの小さな抽象画(アート作品)になります。
にじみがうまくいかない時は?失敗例で原因を見つけよう
ここまで、類似色2色を使った基本の手順と、
応用テクニックを紹介してきました。
ただ、実際に自分で挑戦してみると、
「思ったよりにじまない…」
「境目がくっきり固まってしまった…」
「なぜか色が濁ってしまった…」
ということもありますよね。
でも、安心してください。
それは私も経験している 失敗…??
ですが、失敗ではありません。
これらの失敗は、
水と絵の具の動きを知るための大切なステップです。
にじみが思い通りにいかない時には、
必ず明確な理由があります。

【失敗の原因比較表】
| 状態 | 見た目 | 原因 | 次に直すこと |
| 成功 | 境目がやわらかく混ざる | 紙のツヤと絵の具濃度が合っている/水彩紙の選択が適切 | 同じ条件をもう一度試す |
| にじまない | 色が広がらず止まる | 紙の水分が足りない/乾きかけている | 色を置く前にツヤを確認する |
| 境目がくっきり | 2色がなじまず線のように残る | 色を置くタイミングが遅い/紙の選択 | 先に2色を準備して、ツヤがあるうちに置く |
| バックラン | 白い筋やカリフラワー模様が出る | 後から置いた水分が多い | 2色目を水っぽくしすぎない |
| 濁る | 色が暗く汚く見える | 筆で触りすぎた/色数が多い | 色数を2色だけに戻し、置いたら触らない |
にじみの失敗は、単なる失敗ではなく、
水と絵の具の動きを知るための大切な記録です。
「こすりすぎたかな」
「水が少なかったかな」
「後から入れた水が多かったかな」
そうやって原因を見つけていくと、
次の1枚は必ず描きやすくなります。
にじみを上達させるために、
たくさんのにじみ結果を観察していきましょう。
※バックランが起きる仕組みや、水分量の見方は、にじみ①の基本編でも詳しく紹介しています。
👉【透明水彩】にじみの基本|初心者が最初に覚えたい水加減と紙選び
にじみと類似色のよくあるQ&A
ここでは、類似色2色のにじみを
実際に試したときに出てきやすい疑問に答えていきます。
にじみは、毎回まったく同じ結果にはなりません。
だからこそ、「なぜこうなったのかな?」
と観察することが、上達への近道になります。
まとめ|類似色は、にじみ初心者の安心パートナー

ここまで、
類似色2色を使った透明水彩のにじみについて紹介してきました。
類似色は、
色相環でとなり合う色同士なので、
補色に比べて濁りにくく、
初心者でも安心して試しやすい組み合わせです。
透明水彩でいう「にじみ」は、
必ず大きく広がらなければいけないものではありません。
2~3ミリだけ境目がやわらかくなる小さなにじみもあれば、
背景のように2~3センチ以上広がる大きなにじみもあります。
大切なのは、筆でこすって混ぜるのではなく、
紙の上の水が絵の具を運び、
自然に色が広がっていることです。
初心者の練習では、まず2色の境目に
5ミリ~1センチほどのやわらかな中間色ができるくらいを目安にしてみましょう。
余った水彩紙の切れ端や小さなスペースで、
黄色×オレンジ、青×緑、ピンク系の赤×紫などを何度も試すと、
色の広がり方や水分量の違いが少しずつ見えてきます。
類似色にじみは、
1回で完成させる技法というより、
失敗も含めて、色と水の動きを楽しく学ぶ練習です。
※今回のにじみをきっかけに、ぼかし・重ね塗り・ドライブラシなども学びたい方は、透明水彩技法のまとめ記事もあわせてご覧ください。
👉水彩画の技法28種類まとめ|初心者から上級者まで使える基本・応用テクニック集

ぜひ別の記事でも楽しく学んでいただければと思いますぴー。




















とても安心して使える色の組み合わせなのです。