今回は『一点透視図法の描き方、一緒に学んで奥行きのある絵を描いてみよう!』をわかりやすく解説します!
皆さんこんにちは。私は、HP運営者のマキノロラン(牧野呂蘭・絽蘭)です。
今回は『一点透視図法の描き方』を3つの視点(見る・学ぶ・描く)から解説します。
「奥行きのある絵を描きたいけど、どう描いたらいいか分からない。」と困っている皆さんのために、できるだけ分かりやすく解決法を解説します。
ですので、中学生・高校生は、美術の授業で風景を描くときや、自分でイラストを描くときに役立つような記事にしています。
絵(イラスト・漫画も含め)の奥行き(遠近感)の出し方はいろいろあるんですが、グイ〜ンと奥行きを感じさせるのが『一点透視図法』で描いた絵になります。
これは、もともと西洋で流行した表現技法の一種だと思います。
水彩画も油彩画もマンガ、イラストも、全てに応用できますので、ぜひ一緒に描きながら、描き方を覚えてくださいね。
Contents
【視点1】『一点透視図法』が使われている作例をチェック!
まずは『一点透視図法』を、見て、感じて、知る。これが大切です。
ここでの作例は、西洋で描かれた作品を中心に紹介しますが、実は日本でも『一点透視図法』を使った作例が江戸時代の葛飾北斎という大先生によって描かれています。
『イラスト・水彩画<かっこいい構図の基本12種>一緒に学んで上達!』の記事で北斎先生の図版画像を見れますのでぜひ一度見てください。
『一点透視図法』を考えた?気づいた?すごい人とは?
線遠近法を発見 鏡を利用して洗礼堂をスケッチする
世界初!現代の透視図法(一点透視図法)の完成者とは…?!
なんと、初期ルネサンス時代、イタリアの建築家(+彫刻家)、フィリッポ・ブルネレスキ(Filippo Brunelleschi 1377~1446)です。
上図をご覧ください。
1413年、フィリッポ・ブルネレスキは、ある実験のために、サン・ジョバンニ洗礼堂とシニョリーア広場の建築物を鏡に映しました。そして、その輪郭をなぞりました。
そこで、重要な2つの事項に気づいたのです。… それは何か?
その1「私たちが見るものは、遠くに行けば行くほど小さく描くことができるぞ!」
その2「見えなくなるほど遠くのもの(無限遠のもの=目の高さ)」は、「水平線(地平線)」に行き着くぞ!」
と言うことに気づきました。
この時にブルネレスキは、はるか向こうの無限遠の1点は、私たちの「目の高さ」である「水平線(地平線)」上の1点となって消失していくことを発見したのです。
この点が「消失点」です。
私たちが見る風景の無限遠には、「水平線(地平線)=目の高さ」と「消失点」が存在する。
これこそが、フィリッポ・ブルネレスキの大発見だと言えます。
『一点透視図法』を初めて絵画に活用した画家とは?
「聖三位一体」(私の模写)マサッチオ
フィレンツェの「サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂」に安置されています。
同時代の1426~1428年頃にかけて、前述の建築家フィリッポ・ブルネレスキの協力を得て、大きさが667×317cmと言う巨大なフレスコ画が描かれました。
制作者はマサッチオ(Masaccio、1401~1428)と言う画家です。
その絵画こそが「聖三位一体」です。
建築の製図ではなく、絵として世界初の「一点透視図法」を使った絵画がついに誕生したのです。
本名はトンマーゾ・ディ・セル・ジョヴァンニ・ディ・シモーネ・カッサーイ (Tommaso di Ser Giovanni di Simone Cassai)。
長いですね。本名の一部を短縮するとだらしないと言う意味があり、そこから「マサッチオ」と名乗ったようです。面白いですね~。
1428年、マサッチオは、27歳と言う短命で他界しました。悲しいことです。
*【絵画うんちく】* 聖三位一体 (Trinita)とは…
「聖三位一体の図式」(私の模写)
マサッチオが描いたこの絵の主題『聖三位一体』とはなんぞや?
聖三位一体とは、「父なる神、神の子イエス、聖霊の三位は、全て本質(ウーシア)において同一視され、唯一の神はこの全てをもつ実体である」と言う意味です。キリスト教の重要な教義です。
マサッチオの『聖三位一体』には、このほかに「聖母マリア、洗礼者ヨハネ、寄進者であるドメニコ・レンツィとその妻」が描かれています。また、寄進者の下部には、石棺に横たわる骸骨の全身像が細かく描かれています。
黒死病(ペスト)、赤痢、インフルエンザ、麻疹、ハンセン病など、多くの伝染病が流行した時代であるがゆえに、神に救いを求め、また誰もが死を迎えるというメッセージを残したのだと思われます。
知っておきたい一点透視図法を活用した名画 その1
『メロードの祭壇画/受胎告知』ロベルト・カンピンと助手(1425~28年頃)
中央パネルは64 x 63cm、両翼は 65 x 27cm。メトロポリタン美術館所蔵。
左には絵の依頼主である女性が、中央には受胎告知の場面が、右にはイエスの父親である聖ヨセフが道具を作っている場面が描かれています。
角度の強い放射状の線で描いているので、絵が窮屈です。
そのため、丸テーブルや作業台が傾いた感じになってしまってます。この辺りが一点透視図法の限界を感じるところです。
ちなみに、左右の絵は蝶番で閉じることができる仕掛けとなっています。
非常に緻密な絵で、魂を込めて描いているのが伝わる絵です。
知っておきたい一点透視図法を活用した名画 その2

『最後の晩餐』レオナルド・ダ・ヴィンチ(1495~1498年)
420 x 910 cm サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂。
「12使徒の中の一人が私を裏切る」とキリストが予言した瞬間の情景。
乾燥した漆喰にテンペラで描いた実験的な技法であったためと、食堂という環境が絵画を損傷させてしまいました。
「消失点」をキリストに置くことで鑑賞者の目をキリストに誘導しています。
背景は淡く彩色され、空気遠近法も活用しています。さすが万能の天才レオナルドですね!
【視点2】あなたも描いてみよう!魅力的な『一点透視図法』の立方体!
四ッ谷内藤新宿 歌川広重
馬糞を落としたお馬さんのお尻が圧倒的な迫力で迫り、その足の並びと内藤新宿の建物の並びが一点透視図法で描かれています。遠くに甲州街道の賑わいが感じられる広重流の大胆な構図です。
一点透視図法の条件を話します。まずは、頭の片隅に留めてください。
1 俯瞰図(ふかんず/空から地上を見た景色)で自分を見る。つまり、鳥になった気分で、空から地上の自分を見てみます。
2 「地上の自分は、平らな壁に背中をつけている。」と仮定(想像)します。
3 「自分の目の前には、1本の道が真っ直ぐに伸びている。」と仮定(想像)します。
4 すると、「道の左右の端は、背中の壁に垂直に伸びてきている。」ことになります。
これを絵としてまとめます。すると、この2本の線(道の左右の端)が、自分から放射状の線として伸びる『一点透視図法』の絵となります。
では、実践してみましょう。
『一点透視図法』で、道路を描く。
1 紙と鉛筆を用意してください。
2 紙の中央に水平線(地平線)を1本描いてください。
3 自分の立っている位置を決めます。水平線(地平線)の真ん中に1つの点を打ってください。これは「消失点」です。
4 そこから左右に1本ずつ、水平線(地平線)の下に向かって線を引いてください。道路の出来上がりです。
5 水平線(地平線)の上部に山を描いてみましょう。ついでに雲も。
風景画の出来上がりです。簡単でしょ!
『一点透視図法』で、斜めに見える道を描く。
1 紙と鉛筆を用意してください。
2 紙の中央に水平線(地平線)を1本描いてください。
3 自分の立っている位置を決めます。今回は、中央から左にトコトコと歩いて行き、道を外れて田んぼのあぜ道に入って行きます。水平線(地平線)の左に1つの点を打ってください。
4 道は自分の右にあるので、点から右に2本、線を引いてください。道路の出来上がりです。
5 水平線(地平線)の上部に山を描いてみましょう。ついでに雲も。
風景画の出来上がりです。ついでに、下部に田んぼも描きましょう。
『一点透視図法』で「立方体(直方体)」を描く。〜【建物に応用できる】
1 紙と鉛筆を用意してください。
2 下図のように、紙の中央に水平線(地平線)を1本描いてください。
3 自分の立っている位置を決めます。水平線(地平線)の真ん中に1つの点「消失点」を打ってください。
4 下図のように、消失点を中心に立方体の「正面の正方形」を9つ描きます。
5 下図のように、それぞれの正方形の4つの角と、「消失点」を定規でつなぎます。
6 立方体の後ろの面の下辺、または上辺をひいて、オレンジの放射状の線と交差させます。
7 その交点(オレンジと緑)から、垂直線(水色)をかきます。
8 余計な線を消せば、9つの立体の出来上がり。建物を描くときにとても役立ちます。
【視点3】『一点透視図法』を応用して幾つか絵を描いてみよう!
『一点透視図法』を使って、皆さんも立体的な図を描くことが出来ました。素晴らしいですね。
では次に『一点透視図法』を生かして幾つかの風景をラフなスケッチ風に描いてみます。皆さんも真似してみてください。
『一点透視図法』で「線路のある風景」を描こう!
では、線路のある風景を2つ描いてみましょう。
左図は、目の高さを画面中央&中心位置に立ってみています。
右図は、目の高さを画面上部1/3&右端に立ってみています。
いずれも地平線を引いて目の位置を決め、そこから放射状の線をひきます。
1 左図は、田んぼのあぜ道も放射状の線上に描いて、広がりを出します。
2 右図は、線路・車体の側面・窓枠などを放射状の線状に描いて、遠近感を出します。
『一点透視図法』で「建物と街路樹のある風景」と「教室の机」を描こう!
1 『建物と街路樹』を説明します。
① まず、地平線(赤線)と目の位置「消失点」を決めます。
② 「消失点」から放射状の線をひきます。それが建物の側面の線、窓枠の上下の線、街路樹の高さの線、道路の両端の線などになります。あっという間に出来上がり!
2 『教室の机』を説明します。
① まず、地平線(赤線)と目の位置「消失点」を決めます。
② 「消失点」から放射状の線をひきます。それが机の側面の線、机の足の並びの線、などになります。
何個も繰り返すので混乱しそうですが、中央の机を確定して描いていくとうまくまとまっていくと思います。フリーハンドでいいので、ぜひ練習してみてください。
【重要な補足】 定規の扱いについて
絵を描くときに「定規は使わないように。」と指導されることがあります。
が、これは小学生の頃、のびのびとした自由な線を期待するもので、中学生頃からは「積極的に定規は使う」ことを勧めます。
ただし、定規の線は下書きにとどめ、清書は、定規の線をフリーハンドで丁寧になぞってください。
そうすることで、製図のような絵ではない味わいが出ます。
『一点透視図法』で「空想の立体」を描こう!
1 正方形や長方形などをいくつか書きます。今回は、4つ書きます。
目の高さの線を引き、消失点の位置を決めます。次に放射状の線(橙)を引きます。
2 垂直線または水平線を放射状の線の間に引きます。
3 2の線に対して直角に交わる線(垂直線に対しては水平線を。水平線に対しては垂直線を。)を引きます。
4 余計な線を消して、色分けや陰影をつけると、奥行きのある独自の立体図形が完成します。
【まとめ 「一点透視図法なんて役に立たない。だって…」】
「コンピュータなんて役に立たない。だって答えを出すだけなんだから。」
by パブロ・ピカソ
ピカソの言葉の「コンピュータ」を「一点透視図法」にもじってみると、「一点透視図法なんて役に立たない。だって答えを出すだけなんだから。」となりそうで、実に意味深です。
一点透視図法などの技法を習得すれば、それなりにかっこいい絵が描けます。
しかし、それにとらわれすぎると、なんか型が決まった面白みに欠ける絵ばかりになりそうだということでしょうか。
日本人は、アシンメトリーの感覚に優れた民族です。つまり、「崩しの芸術」が上手なんですね。
自分らしい崩しの入った一点透視図法を開発できたら面白いなあと思います。大天才葛飾北斎先生のように。
皆さんは、透視図法をはじめいろんな技法を学んで行きます。そうしたら、どこかで立ち止まり、今の自分を見つめ直してください。
そして、ぜひ自分だけの世界観を新たに追求してほしいと思います。一生に1枚、自分だけの絵を描くために。
今回は、『一点透視図法の描き方、一緒に学んで奥行きのある絵を描いてみよう!』を一緒に勉強しました。いかがでしたか?
私は、最後まで読んでもらえて、とても嬉しいです。今回の勉強があなたの画力を伸ばしてくれたら本当に嬉しいです。
自分の作品を見て欲しい時はぜひメール(練習した作品画像貼付でもいいですよ。)で連絡してくださいね。一緒に勉強できればと思ってます!
このHPでは、水彩画を中心に、絵に興味のある人の疑問(材料や道具の選び方や使い方、水彩画の技法など)に答える内容を紹介します。その他にも、アクリル画や油彩画、漫画、イラスト、切り絵、デッサンなど、美術全般の指導書としてもやさしくていねいに学べるHPです。ぜひ別の記事でも楽しく学んでいただければと思います。
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