【透明水彩】にじみの基本|初心者が最初に覚えたい水加減と紙選び

透明水彩のにじみの基本を、水加減・紙選び・バックランの3つのポイントと二重の色相環でまとめたアイキャッチ画像
透明水彩のにじみは、水加減・紙選び・バックランの3つを意識すると、初心者でも理解しやすくなります。

透明水彩を始めると、多くの方が一度は「にじみ」に憧れます。

色と色が自然に溶け合い、
偶然生まれた模様が花びらや空、
光の表情を豊かに見せてくれるからです。

しかし実際に挑戦してみると、

  • 全然にじまない
  • 広がりすぎて失敗する
  • 色が濁って汚くなる
  • 乾いたら薄くなってしまう

と悩む方も少なくありません。

こんにちは。水彩画家のマキノロランです。

私自身も長年透明水彩を描いてきましたが、
にじみの成功は絵の具の種類よりも、
まず「水彩紙選び」で大きく変わると感じています。

同じ絵の具、同じ筆を使っても、
水彩紙が違うだけで色の広がり方や乾いた後の表情は驚くほど変化します。

そして、にじみは決して運任せの技法ではありません。

水の性質と紙の特徴を少し理解するだけで、
誰でも美しいにじみを作れるようになります。

この記事では、
透明水彩の「にじみ」の基本を初心者向けにわかりやすく解説します。

にじみは、技法書では『ウェットインウェット(ウェットオンウェット)』と呼ばれる、濡れた紙の上に絵の具を置く技法のことです。

まずは、よくある疑問に答えるQ&Aから始め、
その後に
紙選び、
水の性質、
水分量の調整方法
へと少しずつ深掘りしていきましょう。

Contents

【Q&A】透明水彩の「にじみ」でよくある初心者のお悩み解決

透明水彩の魅力のひとつが「にじみ」です。
しかし、初心者の方からは

「思ったように広がらない」
「濁ってしまう」
「どの紙を選べばいいかわからない」

といった質問をよくいただきます。

まずは、私自身が透明水彩を実践する中で感じたことも交えながら、
よくある疑問にお答えします。

ぼかしとにじみの違いがよくわかりません

ぼかしは筆で作る表現、にじみは自然現象です。

ぼかしとにじみの違いを比較した画像です。左のぼかしは、筆に含ませた水で境界線をなだらかにつなげる表現です。右のにじみは、濡れた紙の上で絵の具が自然に広がる現象です。本記事では、右側の「にじみ」について詳しく解説します。
ぼかしは筆で境界をなだらかにつなげる表現、にじみは濡れた紙の上で絵の具が自然に広がる現象です。

ぼかしは筆に含ませた水で境界線をなだらかにつなげる技法です。
にじみは、濡れた紙の上で絵の具が自然に広がる現象です。

どちらも柔らかな表現に見えますが、
実際に並べると輪郭や色の混ざり方が大きく異なります。

本記事で解説する「にじみ」は右側の技法になります。

詳しく知りたい方はこちらをチェック!
👉 水彩画の技法28種類まとめ|初心者から上級者まで使える基本・応用テクニック集

にじみが濁ったり汚くなったりするのはなぜですか?

一番多い原因は、乾く途中で何度も触ってしまうことです。

初心者ほど「もっと綺麗にしよう」と筆を動かし続けてしまいます。

しかし、にじみは自然に任せた方が
美しく仕上がることが多いものです。

また、補色どうしを混ぜたり、
水が汚れていたりすることも濁りの原因になります。

私自身も色相環のにじみ練習を繰り返す中で、
「触りすぎない勇気」が大切だと感じています。

補色とは
色相環(色を環状に並べたもの)で向かい合う位置にある2つの色の関係のこと。
補色同士の組み合わせは互いの色を強く引き立たせ、混ぜると無彩色に近い色になる。

※詳しくは「にじみが起こる仕組み」で解説します。

乾くと色が薄くなるのはなぜですか?

水が蒸発すると、顔料の凹凸で光が乱反射し、見た目の色が明るくなるからです。

塗った直後は濃く見えても、
乾燥すると1~2段階ほど明るく見えます。

そのため、完成色を想像しながら、
水分量を抑えて、少し濃いめに色を置いてください。

透明水彩では誰もが経験する現象なので、失敗ではありません。

にじみの練習は何色で始めるのがおすすめですか?

最初は2色、多くても3色までがおすすめです。

色数が増えるほど、にじみは予測しにくくなります。
私が初心者の方へおすすめするときは、

  • 黄色+黄緑
  • 青+青緑
  • 青+紫

など、色相環で隣り合う色から始めてもらっています。
まずは成功体験を積むことが上達への近道です。

水彩紙が違うと、にじみも変わるのでしょうか?

はい。私は紙選びが最も重要だと考えています。

同じ絵の具と筆を使っても、
水彩紙が変わるだけでにじみ方は大きく変化します。

実際に私がよく使用しているウォーターフォードとアルビレオでも、
水の留まり方や色の広がり方に違いが見られます。

初心者の方が「自分は下手だから失敗した」と思っていても、
原因は紙との相性だったということも少なくありません。

この記事では、
実際の比較写真を使いながら水彩紙による違いも紹介していきます。

にじみ(ウェットインウェット)の成功は水彩紙選びから始まる

同じ絵の具と水を使った場合のアルビレオとウォーターフォードのにじみ方の違いを比較した実験写真

同じ絵の具・同じ水でも、紙が変わるとにじみ方は大きく変わります。アルビレオとウォーターフォードの比較実験。

透明水彩のにじみは、
絵の具や筆だけで決まるものではありません。

私はこれまで様々な水彩紙を使ってきましたが、
同じ絵の具と筆を使っても、
水彩紙が変わるだけで
にじみの色の広がり方や乾いた後の表情が
大きく変わることを何度も経験してきました。

特に透明水彩初心者の方は、
「自分の技術が足りないから失敗した」と考えがちです。

しかし実際には、
水彩紙との相性が原因になっていることも少なくありません。

まずは、にじみを左右する水彩紙の特徴を見ていきましょう。

水彩紙と画用紙では何が違う?

水彩紙は、厚みがあり、水をふくみやすく、絵の具の広がりをコントロールしやすい紙です。一方、画用紙は波打ちやすいため、透明水彩では仕上がりに差が出やすくなります。
水彩紙と画用紙の違いは、紙の厚みと水の受け止め方にあります。

透明水彩を始めたばかりの頃は、
「どの紙を使っても同じだろう」
と思いがちです。

私自身も最初はそう軽く考えていました。

しかし、
実際に様々な水彩紙を使い比べてみると、
にじみ方には想像以上の違いがありました。

例えば、同じ絵の具、同じ筆、同じ水分量で描いても、

  • ゆっくりと柔らかく広がる紙
  • あまり広がらず輪郭が残る紙
  • 色が鮮やかに見える紙
  • 乾くと少し沈んで見える紙

があります。

これは水彩紙ごとに、

  • 水を保持する力
  • 紙の表面の凹凸
  • 絵の具を吸収する速さ

が異なるためです。

私がよく使うウォーターフォードは、
水を長く保持するため、にじみがゆっくりと広がる印象があります。

一方、アルビレオは発色も良好ですが、
にじみ方には違いが見られます。

初心者の方が思うようなにじみを作れないとき、
原因は技術不足ではなく、水彩紙との相性かもしれません。

まずは紙ごとの個性を知ることが、にじみを楽しむ第一歩です。

ウォーターフォードとアルビレオ|にじみ方を比較してみた

水彩紙といっても、紙によってにじみ方は同じではありません。

ここでは、
ウォーターフォード300g
アルビレオ151g を使い、
同じ条件で絵の具の広がり方を比べてみました。

同じ絵の具を同じ条件で置いても、紙によってにじみ方は変わります。5分後の様子を見ると、ウォーターフォードは色が大きく広がり、アルビレオは色が中央にとどまりやすく、境目に濃いムラが出やすいことがわかります。
5分後の比較。ウォーターフォードは広がりやすく、アルビレオは色がたまりやすい傾向が見られます。
1時間後の写真では、乾いたあとに色がどのように残るかを確認できます。ウォーターフォードはにじみの広がりが大きく、アルビレオは色の濃淡や境目のムラが残りやすい様子が見られます。
1時間後の比較。紙の違いによって、乾いたあとの色の残り方やムラにも差が出ます。

写真の上がウォーターフォード、下がアルビレオです。

どちらも水張りをして、
紙の表面をぬらした状態で、
同じ絵の具を置いています。
変えたのは紙だけです。

写真を見ると、
ウォーターフォードは絵の具が紙の上を大きく広がり、
にじみの変化がよく出ています。
色が水に乗って、外側へ動いていく様子が見えます。

一方、アルビレオは、
ウォーターフォードに比べると広がり方がやや控えめです。
その分、絵の具が中央にたまりやすく、
青と緑、緑と茶色の境目に濃い色ムラが出ています。

この違いには、紙の厚みだけでなく、
紙の材質も関係していると考えられます。

ウォーターフォードはコットンを含む水彩紙で、
水を受け止めながら絵の具を広げやすい特徴があります。
アルビレオはパルプ系の紙なので、水や絵の具の動き方が変わります。

つまり、にじみの結果は、筆づかいだけで決まるわけではありません。

同じ絵の具を使っても、紙が変わるだけで、
広がり方、色のたまり方、乾いたあとのムラが変わります。

透明水彩でにじみを練習するときは、
まず紙による違いを知っておくことが大切です。

比較するポイントウォーターフォード300gアルビレオ151g
にじみの広がり色が大きく広がりやすい広がりはやや控えめ
色のたまり方全体に広がりながらなじみやすい中央や境目に色が溜まりやすい
ムラの出方比較的なめらかに見えやすい濃淡差や境目のムラが出やすい
乾燥後の印象にじみの広がりが残りやすい色の濃い部分が残りやすい
初心者への学び水と絵の具の動きが観察しやすい水分量の影響が出やすいので、練習になる

にじみを美しくする水張り|初心者にも必要?

結論から言うと、私は初心者の方にも水張りを覚えてほしいと考えています。

理由は、

  • プロの仲間入りした気分を味わえる。
  • 「絵が上手くなった気がする」と感じられる。
  • 紙の波打ちが減り、水のコントロールがしやすくなる。

からです。

私は、水張りの最中、紙と対話している気がします。

水を含んで波打ち出した水彩紙が、
やがてしっとりと伸びていき面積をほんの少し広げます。

その時の静寂感、しっとり感は、紙と自分が一体化した気分になります。

準備や乾燥に手間がかかります。
水彩を始めたばかりの方には少しハードルが高い作業でもあります。

しかし、愛情かけて水張りした水彩紙は、
間違いなく自分のパートナーに変身します。

私自身は主に300g前後の水彩紙を使用していますが、
厚手の紙であれば水張りをしなくても十分に制作できると感じています。

それでも、私は水張りします。

7種類の水彩紙に同量の水をスプレーし、3分後の反り方を真上から比較した実験写真
7種類の水彩紙に同量の水をスプレーし、約3分後の状態を比較しました。紙の厚さだけでなく、紙質によって反り方に違いが見られます。

水彩紙は、水を含むと波打つことがあります。

特に紙質や厚さによって反り方には大きな差があり、
今回の実験でも同じ量の水を与えたにもかかわらず、
紙によって変形の程度が異なりました。

紙が波打つと、
水は低い場所へ集まりやすくなります。

その結果、絵の具だまりや意図しないにじみが発生し、
思い通りに水をコントロールしにくくなります。

特に今回解説している「にじみ」の技法では、
水の流れをコントロールすることが重要です。

紙が大きく波打つと、水が思わぬ方向へ流れ、
きれいなグラデーションを作りにくくなります。

7種類の水彩紙に同量の水をスプレーし、3分後の反り方を横から比較した実験写真
 同じ条件で濡らした水彩紙を横から観察すると、紙によって反り返り方に大きな差があることが分かります。にじみを多用する作品では、水張りや紙選びの重要性がよく分かる実験結果です。

今回の実験では、
紙目の方向も結果に影響している可能性を感じました。

今後は紙目を揃えた条件でも比較し、
さらに検証してみたいと思います。

初心者の方にもまずは、

  • 300g前後の厚手の水彩紙 → 水張り推奨
  • 200g前後の薄い紙 → 水張り必須

と考えてほしいです。

本格的に透明水彩を続けるなら、
水張りも覚えておきたい技術です。

🔬実験結果|乾燥すると元に戻るの?

実験後、そのまま自然乾燥させてみました。

すると紙によって差はあるものの、
多くの紙はある程度平らな状態へ戻りました。

ただし制作中は濡れた状態が続くため、
にじみやぼかしを多用する場合は、
やはり波打ちの影響を受けます。

そのため私は、厚手の紙でも水張りを行っています。

7種類の水彩紙を自然乾燥させた後の反り返りの違いを横から比較した実験写真
 
自然乾燥後の比較。濡れている時に大きく反った紙でも、乾燥するとある程度元に戻ることが分かりました。ただし制作中は波打ちの影響を受けるため、にじみを多用する場合は水張りが有効です。

※水彩紙にはさまざまな種類がありますが、初心者向けの選び方については別記事で詳しく解説しています。
👉水彩画初心者の悩み解決!【水彩紙の選び方】3つの視点で優しく解説

透明水彩のにじみはなぜ広がる?水の性質を知ろう

透明水彩のにじみ(ウェットインウェット)は、
偶然生まれる現象のように見えます。

しかし実際には、
そこには水の性質が大きく関係しています。

「全然にじまない」
「思った以上に広がってしまった」

そんな思い通りにならない歯がゆさも、
水の動きを理解すると理由が見えてきます。

私自身、透明水彩を始めた頃は、
にじみを運任せの技法だと思っていました。

しかし何度も色相環やカラーチャートを作るうちに、
水は一定のルールに従って動いていることに気づきました。

にじみを自由にコントロールするためには、

まず水の性質を知ることが大切です。

ここからは、水がどのように動き、
なぜ絵の具が広がるのかを一緒に考えていきましょう。

にじみはなぜ広がる?「水の引っ越し」をイメージしよう

水でぬれた場所に絵の具を落とすと、絵の具は水のある範囲へゆっくり広がっていきます。にじみは、絵の具が水の動きに合わせて移動することで生まれます。
にじみは、絵の具が水のある場所へ動いていくことで広がります。

透明水彩の「にじみ(ウェットインウェット)」は、
紙の上で水が動くことで生まれます。

その基本となるのが、
「水は多い場所から、少ない場所へと流れる」という性質です。

ところが、ここで一つ不思議な現象が起きます。

完全に乾いた紙の上に、
水たっぷりの絵の具を置いても、
実は思ったほど周囲へ広がっていきません。

水の「表面張力」のせいで、
その場でぷっくりとした水たまりになって固まってしまうのです。

にじみが本領を発揮するのは、
紙がすでに湿っているときです。

紙の上にあらかじめ水があると、
それが「呼び水」となって絵の具の表面張力がほどけます。

すると、
絵の具の水分が、まだ絵の具のついていない
「水の多い場所から、少ない場所(湿った紙の奥)」へと、
勢いよく引っ越しを始めます。

これが、私たちが目にする美しい「にじみ」の正体です。

つまり、にじみの広がり方は、次の3つのバランスで決まります。

  • に、どれくらい水が含まれているか(紙の水分量)
  • に、どれくらい水を含ませているか(筆の水分量)
  • 絵の具が、どれくらい薄い(または濃い)か(絵の具の濃度)

「乾いた紙の上では広がらないのに、湿った紙の上だと走るように広がる」

この水の動きのクセを理解することが、
にじみを思い通りにコントロールする第一歩になります。

紙・筆・水分量のバランスで結果が変わる

透明水彩のにじみは、紙・筆・水分量のバランスによって変わります。水が少ないとにじみにくく、ちょうどよい水分量ではきれいに広がります。水が多すぎると、絵の具が広がりすぎてコントロールしにくくなります。
にじみは、紙・筆・水分量のバランスで結果が変わります。

では実際に、紙と筆の水分量が変えると、
にじみはどのように変化するのでしょうか。

私は透明水彩を始めた頃、
「紙を濡らせばにじむ」
くらいに考えていました。

ところが実際には、
紙と筆のどちらにどれだけ水があるかによって、
にじみ方は大きく変わります。

例えば、紙が十分に湿っているのに対して、
筆の水分が少ない場合はどうでしょうか。

結果は、絵の具はあまり広がりません。

反対に、紙の水分より筆の水分が多すぎると、
絵の具は勢いよく広がり、ときには暴走してしまいます。

そして最も美しいにじみが生まれやすいのは、
紙と筆の水分量が近い状態です。

私はこれを、

「紙と筆が会話できている状態」

だと考えています。

片方だけが大声で話しているのではなく、
お互いの声がちょうど釣り合っている状態です。

透明水彩のにじみは、絵の具の色よりも先に、
この水分バランスを整えることが大切です。

最初は難しく感じるかもしれませんが、
何枚も試しているうちに、

「今日は紙が少し乾いているな」
「この筆は水を含みすぎているな」

と少しずつ感覚で分かるようになります。
まずは次の図を見ながら、水分バランスによる違いを観察してみましょう。

にじみは予測できる|まずは3つだけ覚えよう

透明水彩のにじみは、完全な偶然ではありません。紙のぬれ具合、筆の水分、広がる時間の3つを見ることで、にじみ方をある程度予測しやすくなります。
紙・筆・時間の3つを見ると、にじみは予測しやすくなります。
Ronron
透明水彩のにじみは、運に任せた「偶然の美しさ」だけではありません。
そのことを少しは理解していただけたのではないでしょうか。

紙の水分量、筆の水分量、絵の具の濃度。

これらの関係を理解すると、
にじみの広がり方は少しずつ予測できるようになります。

私自身も最初は、
「なぜ今回は上手くいったのだろう」
「なぜ昨日と同じように描いたのに失敗したのだろう」
と本当にわからず悩み続けていました。

しかし色相環やカラーチャートを繰り返し作るうちに、
「なんかこの水分だとしっとり広がるぞ」
「なんかこの紙だと水たまりができやすいぞ」

のように、試行錯誤の中で原因が少しずつ見えてきました。

透明水彩のにじみは、失敗と成功の二択ではありません。

その時の紙や筆、水分量が生み出した一つの結果なんです。

ベル先生
みなさんも、まずはたくさん試してください。
そしてワクワクしながら、自分なりの水加減を見つけていきましょう。

美しいにじみを作る実践テクニック

ここまで、にじみが生まれる仕組みについて見てきました。

「水は多い場所から少ない場所へ流れる」ということ。

そして、紙と筆の水分バランスが、
にじみ方を大きく左右することも分かりました。

とはいえ、実際に筆を握ってみると、
「理屈はわかったけれど、結局どうすれば綺麗ににじむの?」
と思いますよね。

私自身も、頭で理解しただけでは、
絵の具が暴走したり、逆に全くにじまなかったりと失敗の連続でした。

何枚も色相環やカラーチャートを作り、
失敗と成功を繰り返す中で、

「紙がこの状態の時なら、うまくいく!」
「絵の具がこの水分量だと、失敗しやすいな」

という「ベストなタイミングと感覚」を少しずつ掴んでいったのです。

ここからは、私が普段から実践している、
にじみを美しくコントロールするための
「3つの目安」を紹介します。

次のような、具体的でわかりやすいポイントに整理しました。

  • にじませる絶妙なタイミングがわかる
    「紙のツヤ」の見極め方
  • 絵の具の濃さを飲食物に例えた
    「牧野指標」
  • 単色と複数色で変わる
    「失敗しにくい水分バランス」
ベル先生
まずは難しく考えず、実験するような気持ちで、気軽に試してみてくださいね!

にじみの成功は「紙のツヤ」で決まる

にじみ(ウェットインウェット)を美しく操る鍵は、
まず「紙のツヤ(湿り具合)」を観察することにあります。

私も初心者の頃、
ツヤが強すぎる状態で色を置いて絵の具を暴走させたり、
逆にツヤが消えて全くにじまなかったりと、
何度も失敗を重ねてきました。😱😱😱

水を塗った直後のピカピカした輝きは、水分が多すぎる状態です。
この段階で絵の具を置くと、広がりすぎて色が薄くなります。

逆にツヤが完全に消えた状態では、
水分が少なく、筆跡がそのまま残りやすくなります。

ベストは、水たまりがなく、
紙の表面が「しっとりとやわらかく光る」瞬間です。

ベル先生
にじみが上手くいかない時は、まず紙のツヤを観察してみましょう。
それだけで成功率は大きく上がります。
紙の表面のツヤで、透明水彩のにじみやすさが変わることを示した初心者向け解説図
紙がうっすら光るタイミングを見つけると、にじみはきれいに広がりやすくなります。

絵の具の濃さは「牧野指標」で考えよう

指標の目安濃さ向いている場面失敗するケース
お茶さらさら空のグラデーション、淡いWash、背景の1層目色が薄く、乾くとほとんど見えなくなる。複数色の後置きに使うと、水分が多く先の色を押し戻しやすい。
牛乳すうっと広がる単色のにじみ、花びらや葉っぱの柔らかい色の広がり紙が濡れすぎていると広がりすぎる。紙が乾きかけていると、思ったほど広がらず、筆跡が残りやすい。
飲むヨーグルト少しとろり複数色のにじみで2色目・ 3色目を後から置く場面濃く置きすぎると、色が強く残りすぎる。筆で擦って混ぜると濁りやすくなる。

絵の具の濃さは、初心者にとって言葉だけではつかみにくいものです。
そこで私は、
「お茶くらい」
「牛乳くらい」
「飲むヨーグルトくらい」
という感覚的な目安で考えています。

透明水彩の絵の具の濃さは、「お茶くらい」「牛乳くらい」「飲むヨーグルトくらい」と考えると、初心者にもわかりやすくなります。お茶くらいは空や淡いWash、牛乳くらいは単色のにじみ、飲むヨーグルトくらいは複数色のあと置きに使いやすい濃さです。
絵の具の濃さを「お茶・牛乳・飲むヨーグルト」で考えると、にじみの使い分けがしやすくなります。
ここでいう「飲むヨーグルトくらい」は、白っぽい色という意味ではなく、水っぽすぎず、筆先にしっかり色が残る濃さの目安です。

お茶くらいの薄さは、
空のグラデーションやWashの一層目に向いています。

牛乳くらいの濃さは、単色のにじみの基本です。
紙がしっとりしている時に、自然に広がりやすくなります。

複数色をにじませる時は、
あとから置く色を飲むヨーグルトくらいにします。

水っぽすぎる色を置くと、
先に置いた色を押し戻し、輪じみのような跡が出ることがあります。

ピ太郎
先の色を押し戻すって、どういうことですかっぴ~?
Ronron
それは、このあと出てくる『バックランは失敗?表現?見分け方を知ろう』で、くわしく解説するよ。

単色と複数色で変わる|失敗しない水分バランス

透明水彩のにじみでは、単色と複数色で水分バランスの考え方が変わります。単色のにじみは、しっとりした紙に、少し水気を切った筆で色を置くと自然に広がります。複数色のにじみでは、あとから置く色を少し濃いめにすると、色を押し戻しにくく、やわらかくなじみやすくなります。
単色は紙のツヤを見て、複数色はあとから置く色を少し濃くするのがコツです。

1色だけを広げる「単色のにじみ」では、
紙がしっとりツヤを保っているうちに、
筆の水気を少し切って色を置くと、きれいに広がりやすくなります。

一方、
2色、3色を重ねる「複数色のにじみ」では、
あとから置く色の水分量に注意が必要です。

水っぽい絵の具をあとから置くと、
その水分が先の色を押し戻し、
にじみの形が崩れることがあります。

多色にじみのコツは、
2色目以降の筆の水分を少ししぼることです。

画面の水分よりも、少し濃いめの絵の具をそっと置きます。

ベル先生
複数色のにじみでは、水で押すのではなく、少し濃い色をそっと置くイメージですよ。

透明水彩のにじみ失敗『バックラン』とは?防ぎ方と活かし方

バックランとは、
ぬれている画面に水分の多い絵の具や水が入ったとき、
先に置いた色が押し戻されてできる輪じみのような跡のことです。

カリフラワー状の模様に見えることもあります。

私も初心者の頃、にじみが乾くまで席を立ち、
戻ってきたら突然シミのような模様ができていて驚いたことがあります。
同時に、「なぜこんな模様ができるのだろう」と強く興味を持ちました。

バックランは、
なめらかな空や花びらに突然出ると失敗に見えます。
けれど、雲、水面、霧、古い壁の質感などでは、
透明水彩らしい美しい表現になることもあります。

大切なのは、バックランをすべて避けることではありません。
失敗として避けたい場面と、表現として活かせる場面を見分けることです。

なぜ起きる?バックランの理由とタイミング

ベル先生
バックランは、画面の水分が均一でないときに起こります。

特に起きやすいのは、
最初に塗った色が乾き始めた「生乾き」のタイミングです。

透明水彩のバックランは、紙が生乾きの状態のときに、水分の多い筆や薄い絵の具があとから入ることで起こりやすくなります。後から入った水が、先に置いた色を押し戻し、輪じみのような模様を作ります。
バックランは、生乾きの画面にあとから水が入ることで起こりやすくなります。

そこへ水分の多い絵の具や、きれいな水が入ると、
後から入った水が先の色を押し戻します。

押し戻された顔料が外側に集まることで、
輪じみのような跡ができます。

画面全体がしっかり濡れている時は、
色は均一に混ざりやすくなります。

反対に、完全に乾いた後は、
水を置いてもバックランにはなりにくくなります。

つまり、バックランの鍵は「生乾き」です。
防ぐ時も、あえて作る時も、このタイミングを見極めることが大切です。

もう慌てない!バックランを防ぐコツ

ベル先生
意図しないバックランを防ぎたい時は、
画面の水分差をできるだけ作らないことが大切です。

広い面を塗っている途中で、
急に水分の多い筆を戻すと、
そこだけ水が増えてバックランの原因になります。

また、紙の上に水たまりができている時も注意しましょう。

周りが先に乾くと、
水たまりから水が逆流してシミになりやすくなります。
見つけたら、水気をしぼった筆先でそっと吸い取ります。

一番大切なのは、
紙のツヤが消えかかった生乾きの時に、
むやみに触らないことです。

この時間を我慢して待つだけで、
意図しないバックランはかなり防ぎやすくなります。

水彩らしい表現として、あえてバックランを作るコツ

ベル先生
バックランは、狙って使えば水彩らしい表現になります。

まず、ベースになる色を塗ります。
次に、紙の表面のツヤが少し弱まり、生乾きになるまで待ちます。

そのタイミングで、
きれいな水を含ませた筆をそっと置くと、
後から入った水が周りの顔料を押し戻し、
輪じみのような模様が生まれます。

雲、水面、霧、古い壁、抽象的な背景などでは、
この模様が自然な表情になることがあります。

粒状化しやすい絵の具を使うと、
紙の凹凸に顔料がたまり、よりざらっとした表情が出ることもあります。
まずは小さな紙で、実験するように試してみましょう。

ピ太郎
粒状化しやすい絵の具ってなんですかっぴ?
Ronron
絵の具の粒が紙の凹凸にたまって、ざらっとした表情が出ることだよ。ウルトラマリン、セルリアンブルー、コバルトブルー、バーントシェンナなどで見られやすいよ。

実践|美しい色相環でにじみを体験してみよう

ここまで、
にじみを成功させるための「紙のツヤ」や、
失敗しない「水分のバランス」についてお話ししてきました。

頭で基本を理解したら、
次はいよいよ実際に手を動かして、
その感覚を体感してみる番です!

今回は、
内側の円で三原色のにじみ混色を観察し、
外側の円では6色を使って美しい色相環として仕上げます。

ステップ1:二重の円を描いて紙を均一にぬらす

まずはにじみを体験するための土台を作ります。
水彩紙に鉛筆で薄くきれいな同心円を2つ描いて下準備をしましょう。
下描きは見えにくいくらい薄くて大丈夫です。

形ができたら、
いよいよにじみの命である「水」を引いていきます。
太めの筆にきれいな水をたっぷり含ませ、
描いた円の中を均一に濡らしてください。

透明水彩のにじみ色相環を作るために、水彩紙へ二重の円を下描きした写真
まずは水彩紙に二重の円を薄く描き、内側は三原色のにじみ、外側は6色の色相環として使います。

このとき、部分的に水が溜まる「水たまり」ができていないか、
紙を少し傾けて光にかざしながら確認するのが成功のコツです。

第1章でお話しした、
あの「しっとりとしたやわらかなツヤ」
紙の表面全体に均一に広がっている状態を目指します。

焦って色を置く前に、
まずはこの「完璧な濡れ舞台」を整えてあげることで、
この後の絵の具の広がり方が劇的に美しくなります。

ステップ2:内側は三原色、外側は6色でにじませる

紙がしっとりとしたツヤを保っているうちに、
まず内側の円へ3原色を置いていきます。

パレットで赤・黄・青を「牛乳くらい」の濃さに溶き、
円の中でバランスを見ながら3ヶ所にそっと置きます。

内側の円に赤・黄・青の三原色を置き、にじみによる自然な混色を観察している写真
内側の円では、赤・黄・青の三原色が水の中でどのように広がり、混ざり合うかを観察します。

すると、絵の具が水に乗ってじわっと広がり、
隣り合う色と出会います。
赤と黄の間にはオレンジ、黄と青の間には緑、
青と赤の間には紫の気配が生まれます。

ただし、
三原色だけで均一な色相環を作ることが目的ではありません。
内側の円では、色と色が出会ったときに、
どのようににじみ、どのように混ざるのかを観察します。

次に、外側の円には赤・橙・黄・緑・青・紫の6色を置いていきます。

外側の円に赤・橙・黄・緑・青・紫の6色を置き、にじみ色相環を作っている写真
外側の円には6色を置き、にじみのやわらかさを残しながら、色相環として美しくつながるようにします。

こちらは、
色相環として見た目が美しく残るように、
隣り合う色同士が少し触れ合う程度に置くのがコツです。

ここでも、筆でこすって混ぜすぎないようにしましょう。
水と絵の具が自然に溶け合う様子を見守ることで、
にじみならではのやわらかな色のつながりが生まれます。

ステップ3:乾燥後の表情をカラーチャートに残す

色が広がりきったら、
画面に触りたい気持ちをグッとこらえて、
完全に乾くまでじっくり待ちます。

透明水彩は、濡れているときと乾いた後で、
色の濃さやにじみの輪郭が大きく変化する性質があります。

乾燥後のにじみ色相環。内側に三原色の混色、外側に6色の色相環が残っている写真
乾燥後の色相環。内側では三原色の自然な混色を、外側では6色による色のつながりを確認できます。乾燥後の色相環は、にじみ方や混色の記録として残せる、自分だけのカラーチャートになります。

乾いた画面を見つめてみると、
濡れていたときよりも色が少し優しく落ち着き、
水と顔料が偶然作った

「自然で優しいシミの輪郭(エッジ)」

が綺麗に定着しているはずです。

完成した色相環は、
あなただけの特別な「にじみカラーチャート」として手元に残しておきましょう。

使用した紙の種類や絵の具の名前を余白にメモしておけば、
次に新しい作品を描くときに
「この紙と絵の具なら、こんなにじみ方をするんだ」という、
一生モノの最強の教科書になってくれます。

Ronron
今回は、牛乳の濃さでにじませてみましたが、少し濃かったかなぁという感じがします。
次回はお茶くらいのサラサラ具合でやってみたいと思います。

まとめ|にじみは「水まかせ」ではなく、観察して育てる技法

透明水彩のにじみは、
ただ偶然にまかせる技法ではありません。

紙の種類、
紙のツヤ、
筆の水分量、
絵の具の濃さ、
そして乾き始めるタイミング。

これらが複雑に絡み合うことで、にじみ方は変化します。
最初は思い通りにいかなくても大丈夫。

「どのように色が広がり、なぜそこで止まったのか」
を少しずつ観察していくことで、
にじみはだんだんと、狙いを持って使える表現になっていきます。

透明水彩の魅力は、
完全にコントロールしすぎないところにもあります。

水にまかせる部分と、自分で見極める部分。

その両方の絶妙なバランスを楽しみながら、
ぜひあなただけの美しいにじみを見つけてみてくださいね。

今回の実験感想
三原色だけで色相環を作ろうとすると、色が均等に広がるわけではなく、混ざる場所も限られることがわかりました。
その予想通りにいかない動きこそが、透明水彩のにじみのおもしろさだと感じました。
今回置いた外側の6色は、色相環としての美しさが出しやすく、内側の三原色では水による自然な混色を観察できました。
一枚の中で「実験」と「観察」の両方を楽しめる、よい練習になりました。

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今回学んだ美しいにじみを、さらに作品づくりへ活かしてみませんか?
にじみのにじみの魅力を引き出すには、水彩紙の選び方、基本技法、水の表現、そして形をとらえる力も大切です。
ぜひ、あわせて参考にしてみてください。

ピ太郎
ぼくも、いわさきちひろさんのように、デッサン力を身につけて、水彩の「にじみ」を活かした絵が描きたいにゃ〜。

このホームページでは、水彩画を中心に、絵に興味のある人の疑問に答える内容を紹介しています。
材料や道具の選び方、水彩画の基本技法、描き方のコツなどを、初心者にもわかりやすく解説していますぴー。ぜひ別の記事でも、楽しく学んでいただければうれしいですぴー。