
こんにちは。画家のマキノ ロランです。
私は水彩画の初心者の方々の悩みに寄り添う自称「心の優しい画家」です。
透明水彩初心者のために、水彩画の魅力を伝えるための連載をしています。
ところで、みなさんは花々を見た時に
「水彩やイラストで描いてみたいなあ。」と思うことはありませんか?
今回は、「サザンカ」をモチーフとして、
初心者でも楽しめるような「花の描き方ステップ」を解説したいと思います。
今ではAIの発達で、コンピュータが合成画像を即興で作れる時代に突入しました。
しかし、だからこそ私は、
個性を発揮し、その人なりの思いを込めて、
実際に自分で鉛筆やペン、絵筆を持って、
「自己表現する楽しさ」を味わって欲しいと思います。
今回は「サザンカ」をテーマに、透明水彩で花の生命感を描き出す方法を解説します。
この記事を読むことで、
① 花を観察し、形を立体的に捉える下描きのコツ
② 水彩画の基本技法を花に応用した塗り方のコツ
③ 写実で描く方法とイラスト風(淡彩+ペン)で描く方法
を学ぶことができます。
「花の知識」を身につけ、
「画材や道具」を確認し、
「描き方」を学んでほしいと思います。
ゆっくりと楽しみながら、手描きによる自分だけの表現の楽しさを味わってみてください。
🌿 視点A:観察と下描きの基本

A.1 水彩で描く「サザンカ」ってどんな花?
山茶花の暮れゆきすでに月夜なる(水原秋桜子/大正~昭和の歌人・医師)
サザンカと言えば、椿に似た姿ながら、
花びらが一枚ずつはらりと落ちるその儚さに、
多くの歌人や画家が心を惹かれてきました。
サザンカは、ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹小高木。
日本の固有種です。
10月から12月晩秋から初冬の花として親しまれています。
サザンカの野生種は白い花(部分的に淡い桃色)を咲かせます。

分布は四国、山口県以南。
今は、5月頃まで花をつけるハルサザンカ系園芸品種群があり、
3月の花として分類されることもあります。

わしはサザンカを見ると愛を込めて描きたいと心が揺さぶられるのう。
A.2 花の構造を理解する
:合弁花?離弁花?




まずは花弁と花芯を観察してみよう。
花弁数は通常5~7枚、すごくたくさんのもあります。
花芯は黄色い雄しべの塊があります。
A.3 葉の形と観察ポイント
:葉脈と鋸歯
サザンカの葉は、楕円形で先がとがり、
縁(ふち)に細かい鋸歯(きょし:ギザギザ)があります。
サザンカの葉は比較的「光沢」があります。
葉脈は「主脈+側脈」があり、光の方向によって明暗が生じます。
主脈以外は目立ちません。
葉の端の鋸歯は描写しがいがあります。
まず実物または写真を準備し、葉をクローズアップで観察して描いてみましょう。

A.4 形の取り方
:基本形へ単純化して見る
花や葉を描くときは、いきなり輪郭線を写実的に描こうとするよりは、
「円・楕円・三角・四角・円錐(えんすい)・円柱(えんちゅう)」などに単純化してスケッチすると、正確なバランスを保つ練習になります。
サザンカの花の場合、花全体を「楕円形」で捉え、次に花弁一つ一つも「楕円や、ひしゃげた楕円、あるいは横に膨れたハート型」で重ねて描いていくと言う具合です。
図の解説に合わせて、一緒に描いて練習をしてみて下さい。



作例の出来上がりが汚くてすみません。
まだ手指の麻痺が残ってまして…😰💦
A.5 光源を設定し立体感を出す
花弁に光が当たる方向を決めることで、陰影の位置が明確になります。
左上から光を当てると、
右下に花弁の陰影が出るので、立体感を感じやすくなります。
① 絵を観察して描くときは、同じ光源で描く。立体感が明確になる。
② 数日にまたがって室内の自然光で描くときは、同じ時間帯、同じ場所を選ぶ。
③ ライトを使う場合も、①と同様に同じ方向から光を当て続ける。
たくさんの蛍光灯の下では、陰影が混ざり合って陰影の確認が複雑になる。
ですので、ここでは実際のサザンカの描写を省略いたします。
✏️ 視点B:描画材料と準備
さて、ここからは描画材料と準備について解説します。
最低限必要なもの、これがあると便利だなと言うものなども含め紹介したいと思います。
B.1 下描き用の道具
水彩画の下描きに備え、次の道具があると良いです。

1 下描きに最低限必要な道具
以下の道具類が揃っていれば、下描きの工程を上手く進められます。
紙の毛羽立ちが出ないので、後での彩色がしやすくなる。
2 これがあると便利な道具
下描きを転写後の最終的なアウトラインを整えるために使用する。
作品が小さい時は使用せずとも構わない。
3 下描きの工程(初心者が転写する場合)
本番用の水彩紙に直接下描きができる人、
もしくは作品が小さい場合などは、転写ではなく直接描いてもいいですよ。
① 下描き用画用紙に下描きの絵を描く。↓

② それを鉛筆でトレーシングペーパーに1本線で写しとる。↓

③ 自作のカーボン紙を作る。↓


④ 水彩紙、自作カーボン紙、下描きを清書したトレペの順に重ねる。赤ボールペンでなぞって転写する。↓

⑤ このように、やや薄い鉛筆の下描き線が、水彩紙に写転される。↓



B.2 本番用画材

ここで紹介するのは、彩色に必要な本番用の画材です。

たくさんありすぎて迷うかもしれませんが、それもお楽しみの一つです。
描き心地は、しっとり感があります。
練習にはこれで十分かと思いますが、
グラデーションやにじみ、ぼかしなどの表現はやや難しいです。
やっぱりやや高めの水彩紙の方が上達は早いでしょう。
絵の具の伸びが良く、筆先が細くまとまるものが良い。
広い面積を塗る平筆と、
花弁や葉を塗る彩色筆、
さらに細部を描くための面相筆があると良い。
しっかり洗うスペース、もう一度洗うスペース、絵の具を溶く水のスペース。
作品が小さい場合は、豆腐のパッケージなどを代用するのも良い。
手軽で筆を洗った水の汚れ具合が見やすい。
私は、赤系絵の具洗い用のスペース、青系絵の具洗い用のスペース、黄色系絵の具洗い用のスペース、透明な水などのように小分けして準備しておきます。
同時にその色に合わせた筆の数もあればとても使いやすいです。
購入したら2色混色見本を作成しておくと便利。
最初から固形絵の具を購入するのも手軽に始められるので、おすすめです。
マスキング液は使う分だけ小瓶で分けて少し水で薄めておく。
白抜きしておきたい細かい部分に塗るために使用する。
マスキングに使う筆はあらかじめキッチン用洗剤液入りの水に浸してから使う。
こうすることで、筆が固まりにくくなる。時々洗剤液に浸しておく。
私は、水筆に「水:インク液=1:1」の混合液を入れて使用している。
筆が固まりにくくなる。
B.3 水張りの基礎

水張りと言うと、初心者にはちょっとハードルが高いように感じますが、やり方を学べばすぐにできるようになります。
水張り用のテープがない時は、
幅の広いマスキングテープなどで代用することも可能ですが、
剥がれやすいのでお勧めできません。
水をたっぷり含んだ水彩紙が、
ぐったりと伸び切る姿を見るのはとても愛らしく感じます。
私は、木版画用のシナベニヤをよく使います。(写真参照)
その他、スポンジ、水張り用テープ、ハサミ、タオルを準備する。
私は、スポンジの代用として、ティッシュに水を含ませてテープを濡らします。
楽ちんでいいです。
再び紙を水で湿らせて、5分ほど放置する。
紙がしっとりと広がり「もうお腹いっぱいです。」と呟いたようになったら、紙を表に返してテープでパネル(シナベニヤ)に固定する。
あとは乾燥を待つ。
波打ちを防ぎ、絵具のにじみがコントロールしやすくなります。

あと、薄い紙は絶対水張りした方がいいですよ…。
💧 視点C:彩色テクニックと仕上げ
ここでは下描きをした花や葉っぱに
彩色を施す基本的なテクニックを紹介します。
サザンカに彩色を施す場合は、
あまり色数を使うこともなく、
簡単な技法で塗ることができます。
初心者でも安心して彩色を施すことができますので、がんばりましょう。
C.1 ウェット・オン・ウェット
下描きが終えた後、一番最初に薄い色を塗るときに使用する技法です。
あらかじめ水を塗っておき、その上に絵の具を落とし塗り広げます。

💔禁止行為
*絵の具が乾き始めたところを塗り直そうとしないでください。
*汚くなります。
🩷推奨行為
*色をしっかりと乾燥させてから次の色を塗るようにする。
*発色がきれいです。

花びら全体をうすく水で湿らせてから、赤をにじませます。
高価な紙は綺麗ににじみます。
安価な紙(アルビレオなど)はムラが出やすいです。😭
C.2 花弁に濃淡をつける
グラデーションの技法
花弁自体の濃淡や、花弁同士の重なり合いによってできる陰影の濃淡などを表現するには、グラデーションの技法が最適です。

② 色を濃くしたい所に絵の具を差し込む。
③ 花弁の根元は濃く、外側へ向かって淡く。
④ 水を適度に含ませた水筆を軽く動かしならす。

「花弁にグラデーションを自然に作る」練習をしてみましょう。

練習あるのみ!
C.3 花芯を塗る前の下準備
花芯はあらかじめマスキングインクで、
絵の具を弾くようにマスキングしておきます。

花弁を彩色した絵の具が乾いた後、
マスキングをラバークリーナーで剥がします。
ない時は消しゴムや指で代用します。

白抜き部分に黄色を置くと、
花の生命を感じるアクセントになります。

😱 マスキングインクは、水彩紙に塗ってから長期間ほったらかすと、剥がれにくくなるから注意してください。
C.5 イラスト調の描き方は
「輪郭をペン」+「淡彩」がおすすめ
耐水性のペンを使って、
「線描」と「淡い水彩」を組み合わせると、
軽やかなイラスト調の表現になります。
この描き方は、絵はがきやSNS投稿にもぴったりです。
参考Webサイト:https://eomanabo.com/pen-and-wash で
「ペンと淡彩の描き方」を詳しく紹介していますので、
ぜひ下記の描き方と一緒に学んでほしいと思います。


🌺 視点D:花の描き方おまけ
D.1 ステップアップの道筋
単花の練習ができたら、枝や葉を加え、自分独自の世界観を描いてみませんか?
背景の配色を工夫して、季節の空気感を表現するのもいいですね。
② 葉や枝を含む構図の練習をすること。
③ 背景との調和を練習すること。
苦労して練習した分、作品に愛着が生まれますよ。
D.2 資料用「写真撮影」の注意点
スケッチのための資料を集めるには、
花の写真撮影をしておくといいと思います。
以下の点に注意しながら、撮影してみてください。
② 切り花は、白いバックボードで色がわかりやすいようにする。
③ 接写と全体写真を撮って構造を整理しておく。
D.3 サザンカが描かれた歴史上の作品例
画力向上には、模写が最も良い方法です。
たくさんの画家、絵師たちが花の絵を描いています。
ここでは、サザンカを描いた作品を紹介しますね。
瑞渓周鳳(ずいけいしゅうほう)
/ 紙本著色山茶花小禽図(しほんちゃくしょくさざんかしょうきんず)
対角線構図で描かれた小鳥とサザンカ。
小鳥と花の会話が聞こえてきそうですね。

こちらは瑞渓さんの絵を模写しました。

その他にも、小倉遊亀(おぐらゆき)さんの作品なども味があっていいです。
✨ まとめ:念ずれば花ひらく
今回は「サザンカ」を通して、
透明水彩で花の生命感を描き出す方法を学びました。
① 花を観察し、形を立体的に捉える下描きのコツ
② 水彩画の基本技法を花に応用した塗り方のコツ
③ 写実で描く方法とイラスト風(淡彩+ペン)で描く方法
いかがでしたか?
「花の知識」を身につけ、
「画材や道具」を確認し、
「描き方」を学ぶことができましたか?
みなさんが花を描こうと思った動機はさまざまだと思います。
私は、そんなみなさん一人一人の心が穏やかになり、
やがては隣人や命あるものへの愛情として繋がっていけばいいなと思っています。
「花」をキーワードにした詩があるので、
少し紹介して今回の記事を書き終えようと思います。
🌺「念ずれば花ひらく」 坂村真民
苦しいとき
母がいつも口にしていた
このことばを
わたしもいつのころからか
となえるようになった
そうしてそのたび
わたしの花がふしぎと
ひとつひとつひらいていった
みなさんの心にも、花を描くことを通して勇気の花が咲きますように。
1917年(大正6年)8歳の時、父親が急逝。36歳の母と5人の兄弟で内職のどん底生活。
1931年(昭和6年)神宮皇學館卒業後、熊本で教員。
1934年(昭和9年)朝鮮に渡り師範学校の教師。
1945年(昭和20年)終戦後、身重の妻久代と1歳半の長女を連れ、朝鮮から引き揚げて来る。
1946年(昭和21年)「蒼穹」同人の佐伯秀雄の誘いで、愛媛県西宇和郡三瓶町に移住。
私立第二山下高等女学校国語科教諭として着任。
20歳から短歌に精進してきたが、41歳で詩に転じる。
1955年(昭和30年)46歳で目の病にかかり絶望感を抱く。
この時、母が苦しい時に口にしていた「年ずれば花ひらく」という言葉が頭をよぎり、この言葉を真言としていくことを決める。
1962年(昭和37年)53歳の時、個人月刊詩誌『詩国』を発行する。
40年以上1度も途切れることなく、500号の終刊まで続ける。
1967年(昭和42年)58歳の時、伊予郡砥部町に定住。新田高校国語科教諭として着任。
1974年(昭和49年)65歳で退職。詩作に専念する。
午前0時に起床し、夜明けの霊気と星々の光を吸引することで自分の詩を生み出していた。
午前3:30頃に重信川のほとりに赴き、大地に口付けて「地球さん、ありがとう。」と感謝の念を込めた独特のお経を読んで帰ってくる生活を行う。
2006年(平成18年)97歳で伊予郡砥部町にて永眠。老衰。
🖋️ 執筆:マキノ ロラン
公式サイト:https://eomanabo.com/

その他にも、アクリル画や油彩画、漫画、イラスト、切り絵、デッサンなど、美術全般の指導書としてもやさしくていねいに学べるHPですぴー。
ぜひ別の記事でも楽しく学んでいただければと思いますぴー。












